<レスリング>【全国中学選抜選手権・特集】父は世界ベテランズ・チャンピオン! 果たせなかったオリンピックの夢を追う…男子38kg級・勝目大翔(神奈川・不入斗)

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)

5試合に圧勝してチャンピオンに輝いた勝目大翔

 世界ベテランズ選手権の元王者、勝目力也さんの長男、勝目大翔(神奈川・不入斗2年/NEXUS)が全国中学選抜選手権・男子38kg級で優勝。決勝までの5試合を無失点というすばらしい内容で、父が果たせなかったオリンピック出場という夢に向かって力強い一歩を踏み出した。

 初戦の2回戦から準決勝までが第1ピリオドのテクニカルフォール勝ち。決勝は8-0。勝因として、「だれよりも勝ちたい気持ちを強く持っていた」ことを挙げ、「2年生になって勝ちたい気持ちが強くなり、自分から積極的に攻めるようになりました」と、積極的に攻める気持ちを強調した。

 2016年の全国少年少女選手権・6年生32kg級で優勝し、全国王者として中学レスリングに挑戦したが、1年生の昨年は、6月の全国中学生選手権は初戦敗退、この大会はベスト8どまり。「勝つ、という気持ちはあったけれど、相手が強くて勝てなかった」と振り返る。その悔しさを爆発させた2年目。全国中学生選手権3位に続く優勝で、順調に実力を伸ばしていると言えよう。

 単に「勝てばいい」というわけではなかったようだ。全国中学生選手権で負けた伊藤洋行(秋田・天王)や、この大会の41kg級で優勝した菊地優太(東京・大森六)ら、切磋琢磨しているライバルの何人かが階級を上げたという情報を得ると、父には「41kg級に出たい」と訴えたというから、その負けん気は立派。

セコンドとして長男を支えた父・力也さん(右)

 父・力也さんが、現在の身長やパワーからして階級を上げるのは時期尚早と判断し、 “勝負の時”を先送りにした。小学生の時も、全国大会で上位へ行ったのは5年生になってから。背伸びをさせない指導で育ててきた。力也さんは「焦りはありましたけど…」と言いながらも、目先の勝利より、しっかりしたベースづくりに力を置いてきた。

 今回は若干減量させることになり、「成長期なのに、申し訳なかった」という気持ちもあるようだが、「優勝」という自信は、他の何からも得られない貴重なエネルギー。今後のモチベーションにつながるのは間違いない。来年は41kg級、あるいはそれより上の階級で、「ライバルに混じった中で全国二冠制覇してほしい」と期待した。

 全国王者という自信を持ち、さらに厳しい闘いに挑むことになる大翔。来年の目標は全国2大会の制覇だが、その先の目標は「オリンピック」―。山梨学院大~自衛隊でレスリングを続けながら、オリンピックには手が届かなかった父からは、「オリンピックを目指せ」ということをよく言われるという。「その気持ちにこたえたい」と、きっぱりと言い切った。

© 公益財団法人日本レスリング協会