パ新人王の楽天田中和基インタビュー 飛躍への転機は「8月5日のロッテ戦」

インタビューに応じた楽天・田中和基【写真:(C)PLM】

立教大出身野手の新人王は1958年の長嶋茂雄氏以来

 昨季の快進撃から一転、2018年は首位・西武と29.5ゲーム差の最下位に沈んだ楽天。苦しんだチームの中でブレイクを果たし、東北の希望となった若鷲といえば、24歳の田中和基外野手だろう。

 立教大から2016年のドラフト3位で入団した田中は、2年目の今季、俊足・長打力・スイッチヒッターという持ち味をすべて生かして「1番・中堅」に定着。そして105試合出場、423打数112安打18本塁打45打点、打率.265という成績で、則本昂大投手以来、球団3人目、野手としては初となるパ・リーグ新人王を受賞した。

 立教大出身野手が新人王に輝くのは、1958年の長嶋茂雄氏以来、60年ぶりの快挙だ。「2018日米野球」でも日本代表トップチームに初選出されるなど、飛躍のシーズンを過ごした田中に、今季「転機となったプレー」と「自身が選ぶベストプレー5」を聞いた。

――パ・リーグ最優秀新人賞、受賞おめでとうございます。

田中「正直、自分が獲れるとは思っていなかったので、素直にうれしいです。(同じく楽天で新人王に輝いた田中投手と則本投手は)日本を代表する投手なので、その2人に続けるように、僕も日本を代表するような野手になりたいなという気持ちです」

――2年目のシーズンを終えていかがですか。

「規定打席に立ったのも、これだけ多くの試合に出られたのも初めてです。だからこそ、今年は良かったとか悪かったというよりも、ひとつの基準ができたと思います。105試合に出てこの成績というのは、出来過ぎかもしれないですし、本当はもっともっとできたのかもしれない。それは来年やってみないとわからないので、そういう意味でひとつの基準ができたと思います」

――「ひとつの基準ができた」中で見えてきた課題と、今オフ取り組んでいることは?

「チームの方針は細かい技術よりも、アジリティ(俊敏性)を出すことと打球速度を上げること(を求めています)。僕は打球速度などでは良い数字は残せておらず、ホームランを打てるバッターのスピードではないんです。でも、今年それで18本打てたなら、トレーニングしたらもっと(ホームランを)増やせるんじゃないかと思うので、スイングスピードと打球速度を上げるために、ウエイトトレーニングをしています」

――今季のターニングポイントを教えてください。

「8月5日のロッテ戦の4打席目です」

――この日は先発の涌井投手から1回、2回に中安打、4回に空三振、7回の4打席目にホームランを打っています。

「1、2打席目はアウトコースをヒットにしましたが、3打席目でインコースのまっすぐに三振してしまいました。外の球をヒットにした後に、インコースで三振。もちろん4打席目は相手捕手もインコースで勝負してきましたが、その中できっちりとホームランを打てたというのが大きかったですね」

多く記憶に残る平石監督代行の言葉「やりやすさはある」

――「自身が選ぶベストプレー5」についてお聞きします。まず第5位は?

「第5位は7月28日のソフトバンク戦の初球先頭打者ホームランです」

――プレイボール直後、外角のストレートを捉えました。

「この日の試合前に、平石監督代行(現監督)から『最近、1打席目の内容が悪い』と言われていたんです。『空振りでも凡打でもなんでもいいから、初球思い切りいってみろ』と言われて初球の真っすぐをホームランにできたので、僕の中で印象に残っていますね」

――高校時代まで過ごした福岡のヤフオクドームで今季は打率.350、敵地で最多の3本塁打。やはり故郷での試合は特別ですか?

「プロ野球を観るときは絶対ヤフオクドームだったので、その場所でプレーできることはひとつのモチベーションになっていますね。今年結果を残せているのは、友達とかも見に来ているので、僕が意識してなくても勝手に高まっているのかもしれないですね」

――ベストプレーの第4位は?

「6月1日のヤクルト戦です。この日は先発のブキャナン投手から盗塁し、8回に秋吉投手からホームランを打ちました。そして9回の守りで、谷内(亮太)さんの打球を背走しながら捕って、(1塁)ランナーを刺すという併殺プレーを完成させられました。走攻守で活躍できたので、印象に残っています」

――ベストプレー第3位はどうでしょう?

「7月21日の西武戦、メットライフドームでの逆転満塁ホームランです。西武の先発は今井投手でしたが、2打席目のチャンス(3回無死2塁)で三振してしまったんです。打てる球を待った結果、甘い球がなかなか来ませんでした。その後、平石監督代行に呼ばれて『お前、ヒット打とうとしたやろ。球見過ぎや。別に結果は気にせんでええから、思いっきり行かんか』と言われて。(回ってきた)満塁のチャンスでは結果を気にせず、初球を思いきり振り抜くことができました」

――平石監督の言葉が多く印象に残っているようですが、今季はシーズン中の監督交代もありました。そのことについてはどう思っていますか?

「梨田前監督は、僕のことをまず一番に評価してくださった。入団する前から期待していただいていましたし、春のキャンプでも『田中に注目している』と言っていただきました。規定打席に乗ることができて、梨田さんの期待に少しは応えられたのかなと思います。平石さんは昨年ファームの監督をされていたので、一軍と二軍は選手の感覚とか全然違うとは思いますが、やりやすさはあると思います」

 29日に掲載予定の後編ではベストプレーの2位と1位を発表。「プロ入りしたときの目標」を達成したプレーや、最下位からの逆襲を目指す2019年への意気込みを語ってもらっている。「パ・リーグ インサイト」馬塲呉葉

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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