折れない挑戦の心―フィンランドから独立Lトライアウト挑戦「日本野球が憧れ」

独立リーグのトライアウトに参加したメサ(左)とメナ【写真:豊川遼】

フィンランド国内リーグには5チームが所属

 11月22日、ルートインBCリーグと四国アイランドリーグPlusの両独立リーグでドラフト会議が開催された。それに先駆け、17日と18日の両日、史上初となる両リーグ合同トライアウトを開催した。約200名を数えた受験者の中には、ジャパニーズドリームを掴もうと海を渡ってきた選手の姿もあり、北欧フィンランドの代表チームで戦う2選手も参加していた。

 毎年、トライアウトには海外からも参加選手がやってくる。1次試験は主に50メートル走や遠投など基礎的なテスト、そして2次試験では試合形式の実践テストが行われる。今回のトライアウトに参加した、フィンランド代表のアンドレス・メナ=ゲラ内野手(写真右/以下メナ)とホセ・メサ=マルティネス捕手(以下メサ)に話を聞いた。

 元々キューバ出身の2人は、亡命してフィンランドに移住。それぞれ仕事をしながら野球を続けている。メナは31歳で本職は遊撃だが、内野ならどこでも守ることができる。今回のテストには二塁手として参加した。最大の武器はパワフルな打撃だ。一方のメサは強肩とミート力が武器で、中堅から右方向にライナー性の打球を連発する。メナにとってトライアウト受験は2度目、メサは初挑戦だという。

 フィンランドでは、サッカーやF1が人気スポーツだ。その他、ペサパッロという野球に似た競技も人気が高く、国技になっているという。野球自体はまだマイナーな競技で、世界野球ソフトボール連盟が発表している世界ランキングでは56位(日本は2位)。それでも国内トップリーグには全5チームが所属し、1チーム16試合を戦う小規模なリーグ戦が行われている。その中でメナは今季打率.465、4本塁打、39打点、メサは打率.563、1本塁打、13打点の好成績を残しており、フィンランド代表チームでも堂々の主力となっている。

2度目の挑戦メナ「MLBよりもNPBでプレーすることが夢」

 たとえ小規模とはいえ、国を代表する選手がなぜ日本の独立リーグのトライアウトを受けようと思ったのか。それは日本野球に対する「リスペクトの心」があるからだった。昨年に続き2度目の来日だったメナは、以前から日本野球に対して憧れを抱き、「MLBよりもNPBでプレーすることが夢」だったという。メサは「今回、初来日だけど秩序が守られていて、選手同士が敬意を払っている。トライアウトでは周りの選手の声も出ていたし、エネルギッシュだった」と振り返った。

 トライアウト本番の打撃テストでは、右打者メナは左中間に強い打球を飛ばし、両打ちのメサは右打席からライナー性の打球を飛ばし、守備でも軽快な動きを見せていた。だが、残念ながら両者とも1次試験を突破することはできなかった。今後について聞くと「今のところ未定」としたが、2人とも「もし、また機会があれば挑戦したい」とし、その目に闘志の炎を燃やした。

 当日は彼らの他にも、韓国プロ野球経験者や、2021年WBCでイスラエル代表期待の星と目される選手も参加しており、今や独立リーグは日本人選手だけではなく、世界中の選手たちにとっての目標になりつつある。NPBへの登竜門になっているだけに、トライアウトから実際に入団できるのはひと握りの選手のみの狭き門だ。合格する者もいれば、新たな道を探す者もいる。ここからまた、さまざまな野球人生が生まれていく。(豊川遼 / Ryo Toyokawa)

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