「マリアの首」映画化へ 劇作家・田中千禾夫の代表作

 現代戯曲を代表する長崎市出身の劇作家、故田中千禾夫(ちかお)さん(1905~95年)の代表作として知られる戯曲「マリアの首」の映画化が計画されている。東京在住の映画監督、松村克弥さん(55)ら製作関係者が28日、長崎市役所を訪問し、田上富久市長に構想を伝えた。
 田中さんはカトリック信徒。マリアの首は、長崎原爆で破壊された旧浦上天主堂のマリア像を守ろうとするカトリック信者の人間模様を描いた物語で、1959年に岸田演劇賞などを受賞した。市によると、映画化は初の試みという。
 松村さんはこれまで企業や自治体などの協力を得て、戦時中の特攻隊を描いた「サクラ花」などの映画を製作。最後の被爆地となった長崎を題材にした映画を作り、平和を訴えようと「マリアの首」の映像化を発案した。既に原作を基にした脚本の初稿を完成させている。
 今後、企業などから協賛を募り、製作費など計約8千万円を集めたい考え。東京の映画製作会社が手掛け、来年冬に撮影を開始、東京五輪・パラリンピックがある2020年夏に全国で上映する計画という。撮影に合わせ、マリア像の複製も作成する予定。
 松村さんは「原爆の恐ろしさを忠実に描き、長崎を最後の被爆地にという思いを世界に発信していきたい」と語った。

「マリアの首」の映画化の計画について話す映画監督の松村さん(右)=長崎市役所

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