カズオ・イシグロ氏が市民にメッセージ

 昨年12月にノーベル文学賞を受賞した長崎市出身の英国人作家カズオ・イシグロ氏(64)が「近いうちに長崎を訪問することを心待ちにしている」などと記した市民へのメッセージを同市を通して届けていたことが分かった。
 市民会館(魚の町)が17日に同館で開いたイシグロ作品の魅力を伝えるイベント向けに田上富久市長がメッセージを依頼、イシグロ氏が応じた。市長が同日、参加者約60人を前に読み上げたという。
 イシグロ氏は7月、長崎新聞などの取材に対し、新作の執筆などを理由に「恐らくこの2年は旅ができない」としつつ、長崎訪問への意欲を示していた。
 5歳まで長崎市で過ごしたイシグロ氏は、メッセージの中で「『長崎』と聞くといつも特別な感情が湧き上がる」として「晴れた日の午後、近づいてくる電車」「浜屋のおもちゃ売り場の楽しい音」などを振り返っている。「皆さんのうちの何人かとは一緒に幼稚園に通ったことだろう。皆さんのお母さんやおじいさんは私みたいにあの素晴らしい(幼稚園時代の担任)田中先生から教わったかもしれない」とも記している。
 さらに「私の一部はいつも長崎にある」と記述。イベント開催への喜びを示した上で「皆さんの温かい友情と、長崎市の豊かで素晴らしい歴史の中に私のための小さなスペースを見いだしてくれたことに心から感謝する」とした。長崎訪問への意欲を改めて示し「そのときまで皆さんの健康と幸せを祈りたい」と結んでいる。
 市民会館は来年1月にイシグロ氏の紹介コーナーを館内に新設する予定。今回のメッセージを展示し、NHKが来年ドラマ放送するイシグロ氏の作品「浮世の画家」などもPRする計画だ。

カズオ・イシグロ氏が市民宛てに送ったメッセージ

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