英警察、バイク逃走犯確保に仰天手法 国内で賛否沸騰

By 太田清

ボンネットに打ち付けられた容疑者。ロンドン警視庁のツイッターから

 パトカーなどの警察車両が車やバイクで逃走する容疑者を追跡する場面は、テレビの特集番組などでもしばしば目にすることもあるかとも思う。日本では追跡の際の危険を考慮して途中で中止することもあるが、英国の警察が最近、採用した荒っぽい手法に対し同国内で賛否双方の声が上がっている。英紙ガーディアン(電子版)などが伝えた。 

 英国の首都を管轄するロンドン警視庁(スコットランドヤード)は29日までに、昨年10月から逃走するバイクに対し警察車両を故意にぶつけるなどし、容疑者を確保する手法を採用した結果、二輪車を使った窃盗事案が36%減少したことを明らかにした。警視庁は実際に車をぶつける映像も公開。映像には、ぶつけられたバイクの容疑者が警察車両のボンネットに打ち付けられた後、地面に落ちたり、バイクとともに前方に飛ばされる様子が写っている。映像は40万回以上視聴された。 

 警視庁は故意の衝突を「戦術的接触」と名付け、一般の通行人を危険にさらす逃走を食い止めるための最後の手段と強調。これまで63回にわたり追突し逃走を食い止めてきたと説明した。 

 これに対し、野党労働党の「影の内閣」内相であるアボット氏が「潜在的に大変危険な行為。警察は法律を超越すべきではない」とツイートし反対を表明。英国の警察職員組織代表は故意の追突そのものを支持するとしながらも、厳密には現行の法律に違反しており、警察官が訴追される恐れがあるとして懸念を示した。 

 一方、自身も今年、バイクによる携帯電話窃盗被害に遭った保守党政権のジャビド内相はツイッターで「危険性を考慮した上での『戦術的接触』はまさにわれわれが必要としているものだ」と賞賛した。 アボット氏のツイートに対しては、2千近い「いいね」が付く一方で、1万以上のコメントが寄せられ、発言を批判する内容も多かった。

 警視庁の説明によると、追突作戦は「サソリ・ドライバーズ」との名称を持つ訓練を積んだ特殊チームが担い、追突の瞬間にアクセルを緩めるなどできるだけ容疑者にけがを負わせないよう注意しながら行う。犯罪者の間でヘルメットを脱げば、警察は事故を恐れて追跡を中止するとの“伝説”も流布しているが、警察はヘルメット着用の有無にかかわらず作戦を実行。警察車両の今年の追跡事案のうち、4割は容疑者がスクーターや原動機付き自転車を使っていたという。

 ロンドンでは路上などでスマートフォンを使う人が増えるに伴い、バイクを使った窃盗事件は上昇傾向にある。バイクを使い1時間に30人の被害者から携帯電話をひったくった事案も報告されている。 (共同通信=太田清)

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