トヨタ 4代目プリウスがマイナーチェンジ!安全装備を充実させ価格を割安に抑えつつも、フロントマスクはあまり変わらず・・

トヨタ 新型プリウス

デザインが不評だった4代目プリウスがマイナーチェンジ!

日本国内で安定的に高い売れ行きを保っている人気車がトヨタ プリウスだ。今の売れ筋カテゴリーは軽自動車やコンパクトカーだが、プリウスも販売ランキングの上位に入る。3ナンバー車では登録台数が最も多い。

ただし3代目の先代型に比べると、4代目の現行型は売れ行きが伸び悩む。2015年に発売され、2018年の登録台数は1ヶ月平均で約9000台だ。2009年に発売された先代型は、2012年~2013年には約2万台を登録していたから、現行型は落ち込み方が大きい。

ちなみに先代プリウスは排気量を1.8リッターに拡大して、取り扱いディーラーも、2代目の時のトヨタ店+トヨペット店から、カローラ店とネッツ店を加えて全店扱いに移行した。売れ行きを伸ばす要素も多かったが、現行型が半減では問題視されるだろう。

トヨタ 4代目プリウス(マイナーチェンジ前)

販売低迷の原因として指摘されたのが、外観のデザインだ。フロントマスクは最近のトヨタ車に共通する鋭角的な形状だが、ヘッドランプの薄目を開けて涙を流したような表情が不評だった。

テールランプはS字を描くような縦長のブーメラン形状で、これも評価が低かった。縦長のランプはミニバンに多いが、背が高く感じられる。前後のデザインともに、新鮮というよりもカッコ悪いと受け取られた。仕事で使う2トン積みのトラックでも、フロントマスクの形状を失敗すると売れ行きが落ち込むほどだから、乗用車でカッコ悪いと致命傷になる。

そこで発売から約3年を経た2018年12月17日、プリウスは比較的規模の大きなマイナーチェンジを実施した。

マイナーチェンジの限界!?フロントマスクはプリウスPHV顔にならず!

トヨタ 新型プリウス

まず外観では、不満の多いヘッドランプの周辺を変更している。バイビームLEDヘッドランプを少し大きく見せて、従来に比べると表情をハッキリさせた。ヘッドランプ両脇の涙を流したような形状も改めた。

トヨタ プリウスPHV

それでも事前に噂されていたプリウスPHVの4灯式LEDヘッドランプを備えたフロントマスクとは、形状がかなり違う。違和感はある程度まで薄れたが、変化の度合いはいまひとつだ。マイナーチェンジの限界でもあるだろう。

リアビューもテールランプの形状を変えた。相変わらず複雑なデザインだが、縦長ではなくなり、従来型に比べればボディが少しワイドに見える。前後のバンパーも変更を受け、視覚的な安定感を強調した。

なおボディサイズは、全長が4575mmだから35mm伸びている。全幅の1760mmと全高の1470mmは変更がない。最小回転半径も15インチタイヤ装着車が5.1m、17インチは5.4mで共通だ。

ツーリングセレクションの17インチアルミホイールは、樹脂の部分にチタン調の塗装を施した。15インチは以前からアルミホイールの上に樹脂製ホイールキャップを被せる構造だ。アルミホイール、ホイールキャップともに形状を変えている。

今トヨタが推す、コネクティッド類が標準装備

トヨタ 新型プリウス
トヨタ 新型プリウス

内装では、インパネやフロントコンソールトレイにブラックの装飾を使い、質感を高めた。トレイの内部に装着されたワイヤレス方式による「おくだけ充電」(A以上のグレードに1万2960円でオプション設定)のスペースを広げて、大型のスマートフォンにも対応した。

Aプレミアムと同ツーリングセレクションの運転席と助手席には、エアコンの冷気を吸い込むシートベンチレーションも採用した。

装備ではトヨタが力を入れるコネクティッドが注目される。全車にDCM(専用通信機)が標準装着され、Tコネクトのサービスを3年間無料で受けられる。専用オペレーターによるサービスもあり、エアバッグが作動するような事故に見舞われた時は、消防や警察へ自動的に取り次ぐ機能も用意した。従って安全装備としても機能する。

また、これまでプリウスPHVのみに設定されていた縦型モニターのT-Connectナビゲーションシステムもメーカーオプションで新たに用意される。11.6インチのタッチディスプレイは地図も見やすく、使い勝手も良好だ。

このほかスマートフォンアプリケーションのラインに車両を友達として追加して、カーナビの目的地などを確認できる機能も採用した。

相変わらずの低燃費で、先進安全装備はより進化

トヨタ 新型プリウス

先進安全装備も進化している。従来からプリウスではミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーに使う緊急自動ブレーキのトヨタセーフティセンスを採用していたが、新たに後退時に左右方向から接近する車両などを警報するリヤクロストラフィックアラートもオプションで加えた(A以上にSDナビやナビレディセットと併せてオプション設定)。

また以前はSとEではトヨタセーフティセンスがオプション設定だったが、マイナーチェンジ後は全車に標準装着とした。

JC08モード燃費は従来と同じだが、2WDのSやAが37.2km/Lに達する。ハイブリッド車の中でも、特に優れた部類に入る。

価格上昇も、セーフティセンス搭載で実質的には値下げ

トヨタ 新型プリウス

ボディカラーは、ブルーメタリックとエモーショナルレッドIIを新たに加え、ツーリングセレクションには幾何学調のルーフフィルムをあしらったカラーリングも設定している。

マイナーチェンジを受けたプリウスの価格は、Sが256万5000円だ。従来型に比べて8万5910円高いが、トヨタセーフティセンス(従来型は8万6400円でオプション設定)とDCM(専用通信機)を標準装着した。従って実質的に値下げされている。

上級のAは284万2560円だ。以前からトヨタセーフティセンスは標準装着されていたが、電動ランバーサポートなど装備の見直しで6万4997円の価格上昇になった。機能と価格のバランスではSが最も買い得だが、後方の並走車両などを検知するブラインドスポットモニター(BSM)などは、A以上でないと装着されない。これらの安全装備をSやEにもオプションでも用意していないのは不親切に感じる。

ファミリー向けミドルサイズカーの価格帯に主力グレードを設定

新型プリウス(LAモーターショーで初公開)

今はヴォクシーや日産 セレナなどのミニバン、日産 エクストレイルやスバル フォレスターのようなSUVを含めて、ファミリー向けのミドルサイズカーは買い得グレードを260万円前後に設定する。装備の充実した中級から上級のグレードは280万円前後だ。新しいプリウスは、安全装備を充実させた上で、この価格帯に主力グレードを設定した。フロントマスクの変わり映えはいま一歩だが、安全装備を充実させて、価格を割安に抑えたことは注目される。

[筆者:渡辺 陽一郎 写真:トヨタ自動車]

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