大口点滴殺人事件、元看護師を追送検へ 4人目殺害で県警

 神奈川県横浜市神奈川区の旧大口病院(現・横浜はじめ病院)で2016年9月に起きた点滴殺人事件で、入院患者3人に対する殺人容疑で逮捕、送検された元看護師の女(31)=鑑定留置中=が、別の男性患者=当時(89)=の死亡に関与した疑いが強まったとして、神奈川署特別捜査本部は30日にも、殺人容疑で追送検する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。殺人容疑での立件は4回目。

 特捜本部は、同容疑者が別の複数の患者へ投与予定の点滴袋に消毒液を混入した疑いもあるとして、殺人予備容疑でも追送検する方針。精神鑑定の結果を受け、横浜地検が同容疑者に刑事責任能力があると判断したことも判明した。勾留期限を迎える来週末にも起訴の可否を判断する。

 捜査関係者によると、同容疑者は16年9月中旬、同市鶴見区の男性患者に投与予定の点滴袋に、消毒液を混入した疑いが持たれている。点滴袋は事情を知らない別の看護師が投与し、男性は同16日に容体が急変、同18日に死亡した。

 県警は、一連の事件が発覚した同20日時点で遺体が火葬されていなかった男性の司法解剖を実施。体内から消毒液に含まれる界面活性剤の成分が検出されたが、死因は容体急変後に投与された強心剤の中毒症状と診断された。

 特捜本部は男性の死亡に不自然な点があるとみて、複数の専門家から意見を聴取。同容疑者の鑑定留置中も捜査を重ね、界面剤が容体急変を引き起こし、死亡の直接的な原因になったとの見方を強め、殺人容疑での立件に踏み切る。また、院内で保管されていた未使用の点滴袋を鑑定した結果、界面剤の成分が検出された6袋について、同容疑者が患者を殺害する目的で準備行為をしたとして、殺人予備容疑を適用する方針。

 捜査関係者によると、同容疑者はこれまでの調べに対し、10人以上への消毒液の混入を示唆。動機については、患者を自身の勤務時間外に死亡させることで、遺族への説明役になるのを避けたかった、という趣旨の供述をしていた。

 特捜本部は、同容疑者の供述に患者ごとで濃淡があることから、明確に殺害対象とした患者がいる一方、鶴見区の男性を含む一部患者に関しては、明確な標的との認識がなかった可能性があるとみている。

 同容疑者は7月、横浜市青葉区の男性=当時(88)=を殺害したとして逮捕された。さらに同市港北区の男性=同(88)=と同市神奈川区の女性=同(78)=への殺人容疑で再逮捕され、12月3日までの約3カ月間、刑事責任能力の有無や程度を調べるために鑑定留置されている。

 横浜市神奈川区の旧大口病院(現横浜はじめ病院)

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