金属行人(11月30日付)

 韓国鉄鋼業界の関係者と話していると「今の政権の元では、大企業は怖くて思い切った投資ができない。国内経済はもっと悪くなるのではないか」との声がある。鉄鋼トップのポスコは2桁の利益率を確保して好調さを維持するが、産業界全体を見渡すと、現代グループはじめ苦戦が目立つ▼日本は人手不足が大変な問題だが、韓国では失業率が上昇している。左派政権が労働者側に立った政策を推し進めているのに、それが結果として雇用情勢を悪化させているのだから皮肉だ。20歳代の若者の失業率は約10%にも達するという。最低賃金が急激・大幅に引き上げられ、経営できなくなった中堅・中小企業が相次いでいる。中小企業の人件費上昇は、大企業にも外注費上昇などの形で影響があり、鉄鋼メーカーにもインパクトがある▼日本鉄鋼業にとって韓国鉄鋼業界の動向は、同じ東アジア圏の中にあって影響が少なくない。例えば、厚板需給ひっ迫の中で日本ミルが韓国造船メーカーにどう対応していくのか。東京製鉄と提携した東国製鋼が、どこまで提携策を活用し、電炉メーカーとしての将来像をどう描くのか。ほかにも目が離せないテーマがあり、注視が必要だ。

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