新井貴浩氏が語る…素直で可愛い広島の後輩選手たち みんながMVP級の活躍

広島の後輩選手たちについて語った新井貴浩氏【写真提供:DAZN「Home of Baseball」】

足の引っ張り合いはなし「あいつが打てばオレはもっと打つ」

 2018年シーズンを最後に、20年間の現役生活にピリオドを打った広島の新井貴浩氏。DAZNでは、オフの新番組「Home of Baseball」の配信を開始。「カープ優勝の軌跡」(11月30日~投手編、12月7日~守備・走塁編、12月14日~打撃編)では新井氏へのロングインタビューを行った。2016年に現役引退した黒田博樹氏とともに、広島のレジェンドとして巨人に続く2球団目となるセ・リーグ3連覇に貢献した新井氏が、カープへのチーム愛、選手たちとの絆、自らの歩んできた道について語り尽くした。第2回は、広島における選手同士の関係性、自分から見た若い選手たちについて語ってくれた。

 第1回で、打席に向かう新井氏と丸が交わしている言葉の内容について新井氏が言及したくだりがあったが、年上であろうがレジェンドであろうが、フランクにものが言える雰囲気があることが、広島の最大の強みだ。

「ユニホームを着てグラウンドに立っている時は、(上下関係は)ほぼないんじゃないですかね。その彼らも、まだ年齢は若いですけれども、考え方がしっかりしているので、グラウンド離れた時はすごく礼儀正しいですね」

 プロの世界は、チームメートであると同時に、お互いがライバル。他人を押しのけてでも上がっていかなければ、生き残れない過酷な世界でもあるが、新井氏によると、広島にはギラギラした競争社会の雰囲気はないようだ。

「昔から、プロ野球は自分とポジションがかぶる選手、タイプがかぶる選手はケガしろケガしろっていう風に思っとかないとダメだと、僕も若い頃、先輩に教えられました。ケガさせてでも自分が出ないといけない、それがプロなんだって僕は言われてたんですよね。

 でも、僕はそんなこと思ったこと1回もなかったんです。ライバル選手が例えば2本打ちましたっていったら、じゃあ自分は3本打ってやろう、よしオレは負けないぞ、そういう考え方だったんで」

 若い選手たちも、新井氏の考え方と基本的に同じだという。

「ライバル同士ではあるんですけれども、多分あいつケガしろとは思ってないと思います。あいつがこれだけ打つんだったら、オレはその上を打ってやろうっていう風に思っている。それだけ性格の良い、素直な選手が多いんだと思います。だから、すごく雰囲気がよく盛り上がってるように見えるんじゃないでしょうかね。いいところで打ったら、みんなベンチで喜んでるじゃないですか。ああいう空気感っていうのは、素晴らしいなと思いますけどね」

若手は弟のような存在「可愛い分心配も多い」

 お互いに切磋琢磨し、高め合って結果を出していく。仲はいいが、なあなあにはならず、誰かが活躍すれば素直に喜び、それに負けないよう自分も頑張る。そんな“ポジティブのサイクル”が広島にはできあがっている。

 突出したヒーロー的な存在はいない。「タナキクマル」と総称される田中、菊池、丸(巨人移籍を表明)に加えて鈴木誠也、會澤翼……誰もが自分の場所を守り、自分の仕事をすることで、チームが機能している。

「丸もすごいですし、(鈴木)誠也もすごいですし、會澤も頑張りました。あと、キク(菊池)も打つ方はなかなか思うようにいかなかったと思いますけれども(今シーズンの菊池は打率.233)、彼の場合はあの守備で何打点防いでるかっていうことですからね。だから、そういう目に見えない部分での貢献度の高さっていうのはすごいものがあるので、これっていうのを言えないですね。みんながMVPっていうぐらい」

 そんな中、新井氏が今年もっとも成長した選手として挙げたのが、今年投手陣の軸として、15勝7敗と菅野智之(巨人)と並んで最多勝を獲得した大瀬良大地だ。

「(大瀬良)大地は完璧にステップアップしましたね、去年より。もともと、すごく性格がいい。いろいろなものを吸収しよう、勉強したいっていう謙虚な姿勢がある。去年、シーズン終わってすぐ、『黒田さんと一緒に食事に行こうか』って言ったら、『是非お願いします』って。去年終わったすぐの段階で、来年に向けてやることを彼はどんどん吸収しちゃう。その姿勢が素晴らしいですよね」

 年ごとに伸びていく若い選手たちは、新井氏にとって家族も同然の存在だ。自らが引退した今も、穏やかな目で躍動する若手を見守っている。

「やっぱりみんな可愛いので、ほんと弟のようだと思ってますし、だから可愛ければ可愛い分、心配が多いですよね。まだ来年になってないですけど、来年あいつら大丈夫かなとか、可愛い分、余計心配が多いです。大きなケガするなよとか、それこそ風邪引くなよとか、そんな感じですね」(Full-Count編集部)

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