発言の波紋

 皇族の方もこんなに率直に話をするんだ-旅行中に皇居を訪れたという会社員の言葉が昨日の紙面にあった。多くの市民に共通する感想だろう▲天皇の代替わりに伴う皇室の祭祀(さいし)「大嘗祭」(だいじょうさい)への公費支出に“異議”を唱えた秋篠宮さまの発言が波紋を広げている。「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」「できる範囲で身の丈に合った儀式にすることが本来の姿」▲宮内庁長官は聞く耳を持たなかった-と舞台裏も添えて持論を語られた。発言に困惑し、苦言を呈する向きもあると聞く▲賛否も分かれるだろう。政教分離原則や皇族の政治的発言、皇室経済の在り方などの論点を詳述するには、この欄では行数が足りない。いずれにせよ、新時代に向かう皇室の姿を考える上では、貴重で果敢な問題提起と受け止めたい▲振り返れば、皇太子妃の体調や内親王の不登校、血統の先細りを前提にした皇室典範の改正論議など、しばしば無遠慮にさえ映る議論や報道がなされてきたこの30年だ。天皇陛下の退位問題は、陛下もまた80の坂を越えた一人の高齢者であることを印象付けた▲「平らに成る」と書いて平成。あいにく、時代は平穏、平たんだったとは言い難い。ただ、国民と皇室の関係はいくらかフラットになりつつある-その思いを新たにする。(智)

 


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