投手の制球力を示すK/BB 今季圧倒的トップに立った意外な左腕とは【パ編】

楽天・岸孝之【写真:荒川祐史】

奪三振を与四球で割るK/BBは投手の優秀さ、安定感を表す数値

 投手にとって奪三振は、振り逃げ以外では出塁を許す余地がない最も安全なリザルトだ。一方で与四球は、打者に一塁を与えてしまう最も残念なリザルトだ。良い投手とは奪三振が多く、与四球が少ないと言えるだろう。

 奪三振数を与四球で割るK/BBは、投手の優秀さ、安定感を表す数値としてMLBでは非常に重視されている。
今季パ・リーグで50イニング以上投げた投手51人のK/BBランキングを見てみよう。

パ・リーグ K/BB 上位10傑

1塩見貴洋(楽)6.63(53奪三振8与四球68回1/3)
2有原航平(日)5.80(87奪三振15与四球110回2/3)
3岸孝之(楽)5.48(159奪三振29与四球159回)
4上沢直之(日)3.97(151奪三振38与四球165回1/3)
5アルバース(オ)3.95(83奪三振21与四球114回)
6公文克彦(日)3.71(52奪三振14与四球54回)
7則本昂大(楽)3.67(187奪三振51与四球180回1/3)
8菊池雄星(西)3.40(153奪三振45与四球163回2/3)
9西勇輝(オ)3.31(119奪三振36与四球162回1/3)
10森唯斗(ソ)3.21(61奪三振19与四球61回1/3)

 K/BBが5を超えれば優秀と言える。パでK/BBが最も高いのは楽天・塩見。今季は出遅れて5月から1軍で投げた。勝ち星には恵まれなかったが、6月以降先発投手として安定感を増した。日本ハム・有原も今季は不安定な成績が続いたが、与四球は少なかった。この二人は、制球力以外に課題があったということだ。来季の成績に期待が持てるだろう。

規定投球回では楽天・岸が唯一の5点台をたたき出しトップ

 規定投球回数以上では楽天・岸が1位。もともと岸は制球力に定評があったが、楽天移籍後は奪三振が増えてK/BBが上昇している。今、最も優秀な先発投手だと言えるだろう。

 日本ハム・上沢は昨年、32与四球74奪三振。今季は投球回数が60イニング増えたが、与四球は6、奪三振は77も増加。上沢も岸と同様、奪三振数が急増して投球が安定したと言えるだろう。奪三振王の則本のK/BBは3.67、奪三振は抜群だが、与四球もそれなりに出していた。西武の菊池雄星も同様の傾向だった。

K/BB下位5人も見ておこう

47トンキン(日)1.43(33奪三振23与四球51回)
48中田賢一(ソ)1.39(79奪三振57与四球91回2/3)
49ローチ(オ)1.27(19奪三振15与四球50回1/3)
50藤平尚真(楽)1.26(68奪三振54与四球81回1/3)
51カスティーヨ(西)1.13(51奪三振45与四球74回1/3)

 奪三振と与四球にそれほど差がない投手。成績もいまいち。ソフトバンク・中田は昨年、78奪三振と今季と大差がなかったが、与四球は40から57へと増加、防御率も4.57から5.20と悪化した。もともと制球力がある方ではなかったが、課題は明らかだ。

 K/BBの上昇は投手の進化を端的に表していると言えるだろう。来季もK/BBの推移に注目したい。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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