【減災新聞】〈知る・深める〉図書館にみる「復興」 岩手の経験、専門家語る

 「被災図書館の復興とコミュニティ」と題した講座が11月24日、横浜市中区で開かれた。登壇した関東学院大の千(せん)錫烈(すずれつ)准教授(図書館情報学)は、東日本大震災で津波に見舞われた岩手県内の図書館などで資料保全や事業の再開を支援。その経験も踏まえ、多様な主体が関わる図書館には、地域の課題解決を支える重要な役割があると強調した。

 千准教授は震災後の2011年9月から14年3月まで盛岡大に在籍。他の教員や図書館職員らとチームを結成し、沿岸部の図書館の活動支援や資料救出に当たった。

 市庁舎などが津波で全壊した陸前高田市では、市の広報誌の震災前の23年分を電子化。パソコンとスキャナーで学生と作業したが、県立図書館が所蔵していなければ不可能だったことから、「資料の分散保存は大切」と訴えた。市立図書館や高校でも、泥やカビだらけになった郷土資料や校内資料のクリーニングや修復、電子化などを進めた。

 また、宮古市や野田村などで図書館や学校図書室の再開を支援した。書架のレイアウトや配架作業などに取り組んだほか、再開後も読み聞かせや影絵劇の上映を通じ、心に傷を負った子どもたちが少しでも前を向くきっかけをつかめるよう活動したという。

 震災直後は料理や園芸関連の本が読まれ、徐々に防災や不動産、ビジネスや法律などに変わっていたことから、読書の傾向は「被災地の状況を映す鏡だ」と千准教授。また、「本人の意思と自主性が尊重される施設」である公共図書館は「情報格差を是正し、地域の情報センターであるだけでなく、人々が集う『場』としての役割も大きい」と今後の方向性を展望した。

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