脱炭素社会を目指す企業グループが日本政府に提言

日本の温室効果ガス対策は国際社会から注目されている (Bioversity International:Dry river bed in SriLanka)

脱炭素社会を目指し93社が加盟する日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は11月30日、日本政府が進める「パリ協定に基づく長期成長戦略」への提言を公表した。気候変動への対応が市場の変化をもたらし国や企業の国際競争力に直結すると考え、長期成長戦略に国民全体で危機感を共有することや「2050年日本国内の温室効果ガス排出ゼロ」など具体的な目標の明記を訴えた。近く、関係省庁の大臣などに対して提出する。(松島 香織)

JCLPは、リコーやイオンなどの企業が加盟する脱炭素社会を目指す企業グループだ。RE100やEV100、EP100の普及・支援や企業からの積極的な政策提言を行っている。

パリ協定長期成長戦略は政府が進める「未来投資戦略」の一環で、パリ協定に基づき温室効果ガスの低排出型の経済・社会の発展を目指した長期戦略を検討しており、現在までに3回の有識者によるパリ協定長期成長戦略懇談会(以下、懇談会)を開催している。

懇談会では、日本が世界全体の温室効果ガス排出削減へ貢献することや脱炭素化を経済・社会的諸課題の解決にもつなげていくこと、ESG金融の推進や脱炭素化技術・サービスが市場で評価される仕組みを構築する「経済・社会システムのイノベーション」が必要であることなどが議論されている。

JCLPはパリ協定長期成長戦略に関し、「今後の日本の脱炭素化の進展を左右する最も重要なテーマ」と指摘する。2020年のパリ協定の約束期間開始を控えた2019年には、G20サミット首脳会議が大阪で開催される。国際的にも気候変動分野での日本の技術的潜在力への期待がある一方、国内外における石炭火力発電への関与などで注目が集まる。

そうしたなかでJCLPは同成長戦略について、政府・自治体・企業・市民などすべてのステークホルダーが脱炭素社会の実現を共有し、目的地(ゴール)とそこに至る経路を明確に示すよう、日本のあるべき姿(方向性)を提言した。

提言の骨子は以下のとおりだ。

提言1.国民全体で気候変動への危機感を共有する
提言2.ビジョンとして「脱炭素ビジネス立国」を掲げる
提言3.目的地(ゴール)として、「2050年日本国内の温室効果ガス排出ゼロ」を明記する
提言4.国内排出ゼロへの経路として、「日本の脱炭素マーケットの飛躍的拡大につながるカーボンプライシングと公共投資による脱炭素インフラの整備」を明記する
提言5.「転換マネジメント」の仕組みを構築する

公表前にJCLPは全国の18-69歳の男女1000人にアンケート調査を行った。提言内容について、「賛成できる」と回答した人が約3割、「まあ賛成できる」と回答した人が約6割で、合計で9割以上の人が賛成しているという結果だった。

JCLP事務局は「今回のJCLPの提言に対する市民の方々の支持がどれくらいあるかを理解し、提言内容と合わせて政策立案者の方々に参考資料にして頂ければ」とコメントした。

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