JAかみましき編(10) 「協同組合の力」発揮、困難乗り越える 【熊本地震 あの時何が】

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六嘉、大島の施設を統合し、地震後に整備されたJAかみましき嘉島カントリーエレベーター=嘉島町

 2016年4月の熊本地震で、JAかみましきの農産物の出荷態勢が脅かされたのはスイカだけではなかった。コメや麦などの乾燥・集荷施設7カ所は全て被災。特に嘉島、甲佐、御船の各町にあるカントリーエレベーター4カ所は、麦の収穫期を前に深刻な状態に陥っていた。

 地盤が沈下して、麦を乾燥・貯蔵する行程に運ぶコンベアがずれ、エレベーターがゆがんだ。「麦はデリケート。6月初旬の晴天時に刈り取りできないと、雨に打たれて実った麦が発芽してしまうことがある」とカントリー運営委員会の委員長、岡本篤幸(73)。復旧時期は当初見通せなかったが、カントリー4カ所とも応急修理を急ぎ、麦秋のころには再開にこぎ着けた。

 最終的に、大きく損傷した六嘉と大島(いずれも嘉島町)や御船(御船町)は解体を余儀なくされた。その後、六嘉と大島を統合して嘉島カントリーを新設し、設備を増強した甲佐カントリー(甲佐町)が御船を併合した。ただ、こうした再編は突然の話ではなかった。

 特定の作物や地域に限らず、全国の農村は高齢化や後継者不足などから、生産体制の見直しを迫られている。JAかみましきのカントリーに関しては、地震前から具体的な再編案が検討されていた。当時はJA理事で、甲佐町にUターンするまで農林水産省大分農政事務所で食糧部長も務めた岡本は「カントリー再編は地震が背中を押す格好になったが、農業の将来を考えると、乗り越えなければならない課題が多く横たわっている」と痛感。地震前年に設立した農事組合法人の役員としても、新たな農業の形を模索している。

 数々の課題の中でも人手不足は極めて深刻だ。さまざまな作物の選果作業を担う人手の確保は難しく、高齢化も進んでいる。その状況に熊本地震は追い打ちをかけた。窮状を救おうと県内外のJAは「JAグループ支援隊」を展開。全国農業協同組合中央会(JA全中)によると、延べ5047人を被災地に投入し、選果場など22カ所でイチゴやニンジンなどの出荷作業を支援した。

 受け入れはJAかみましきが最も多く延べ714人。16年7月まで、益城西瓜[すいか]選果場など11カ所で生産者らを支えた。益城総合支所長の松本和文(57)らJAかみましきの関係者は「JAの根幹にある協同組合の力が発揮された」と口をそろえる。

 組合長の梶原哲[さとる](58)も「JAのつながりの強さを感じた。そして、JAが担っていく地域貢献の役割も再確認できた」と振り返る。担い手減少などの課題は深刻だが、「だからこそ、地震の困難を乗り越えた経験を生かしたい。地域になくてはならない組織として、責任を果たしていく」と今後を見つめる。=文中敬称略(小多崇)

 ※「JAかみましき編」は今回で終了します。

(2018年12月4日付 熊本日日新聞朝刊掲載)