弘前出身の直木賞作家・長部日出雄さん追悼、雑誌で特集相次ぐ

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文芸誌などに相次いで掲載された、長部日出雄さんの追悼特集

 青森県弘前市出身の直木賞作家・長部日出雄さんが10月18日に84歳で亡くなったことを受け、最近発売の月刊文芸誌や文学関係の雑誌では追悼特集が相次いで組まれている。印象的な表情の写真を巻頭に大きく掲載したり、親交のあった関係者が思い出を振り返るなどそれぞれの形で長部さんを悼んでおり、文壇の喪失感がにじむ内容となっている。

 長部さんが映画時評「紙ヒコーキ通信」を長年連載した「オール讀物」(文芸春秋)は、12月号の巻頭特集「惜別の作家たち2018」の冒頭、凛(りん)とした表情で遠くを見つめる長部さんの姿を掲載。同じく18年に亡くなった金子兜太、橋本忍、津本陽、内田康夫らの大御所を抑えて、最も大きいスペースが割かれた。

 雑誌「波」(新潮社)の12月号には、長部さんと60年来の親交があった元編集者・大村彦次郎さんによる追悼文「うわァ、オサベさーん」を見開き2ページで掲載。

 大村さんは、作家としての長部さんについて「八戸の三浦哲郎、仙台の常盤新平、山形の井上ひさし、おなじく藤沢周平、それに弘前の長部さんが加わって、この五人が当時、昭和ひとケタ生まれの、東北の風土を代表する作家と言われたことがあった。この人たちに共通するのは律儀で、万事控え目で、そのくせテコでも動かぬみずからへの執着力である」などと評した。

 また、長部さんと京都に旅行した際、当時人気テレビ番組の常連ゲストだった長部さんの姿を見た女学生が歓声を上げたエピソードなども紹介。映画に対して並々ならぬ情熱を傾けた一面とその苦労を振り返り、「長部さん、もうそんな苦労をしなくてもいいね。みんな知っている。安らかに眠り給まえ」と結んだ。

 長部さんの地元のタウン誌「弘前」12月号は、過去に同誌で連載されたエッセー「からくち女性論」「振り子通信」の一部を再掲載。長部さんの直木賞受賞作「津軽世去れ節」などを出版した津軽書房(弘前市)の伊藤裕美子さんが、「振り子通信」を書籍にまとめて出版した際の長部さんとのやりとりや、酒席での思い出をつづった。

 このほか、文芸誌「小説すばる」(集英社)の12月号には、長部さんが第1回から選考委員を務めていた「柴田錬三郎賞」の今年発表分、第31回の選評を掲載。結果的に長部さんの最後の原稿となったこの選評では、受賞作の「雪の階(きざはし)」(奥泉光著)について「世界を覆うテロリズムという不治の病の根本原因を解明しようとした野心作だ」と評している。