赤潮原因 AIで素早く特定 水産業の技術向上に期待

 AIを活用して赤潮の発生原因、プランクトンを検出するシステムを、佐世保工業高等専門学校(佐世保高専)の坂口彰浩准教授(制御工学)が開発した。専門家が目視でする検査を自動化。熟練した技術がなくても赤潮の発生原因を素早く特定でき、被害拡大防止に役立つと期待される。坂口准教授は「さらに精度を上げ、長崎の水産業のレベルアップにつなげたい」と意気込む。
 赤潮は海中のプランクトンが大量に増殖したり集積したりして海水が変色する現象。主に6~9月に発生する。水温上昇や、雨で陸から海に栄養物質が流入することで起きると考えられている。昨年夏の伊万里湾の赤潮では松浦市で養殖魚約68万5千匹が大量死。約6億1千万円の被害が出た。
 定期的な検査では海水を採取後、専門家が顕微鏡で種類や個体数を確認する。しかし結果が分かるまで約半日かかる上、見た目が似ていたり見え方が変わったりするプランクトンを見分ける経験や知識も必要となる。赤潮は潮の流れで移動するため、事前に対策を取りたい養殖業者は、早く正確な検査結果を求めていた。
 システムは、画像の特徴を抽出できるディープラーニングというAIの一種を活用した。県総合水産試験場が培養するプランクトンのうち、主に本県の海域で赤潮を引き起こす危険性が高い5種類の画像をそれぞれ約1500~3千枚撮影。個体の色や形、模様などを学習させた。USB接続した顕微鏡からコンピューターに画像を送信して読み込ませると、種類別のプランクトンの数が瞬時に表示される。
 坂口准教授の専門分野は、太陽電池などに使うシリコンの加工に用いる「ダイヤモンドワイヤ」の砥粒(とりゅう)の研究。“動いている小さなもの”の画像解析ができる研究者として、県内企業から打診を受け、約2年前から開発に取り組んだ。引き受けた理由について「生物という正反対のベクトル。だがやってみないと分からない」と語る。
 現在は県内の別の企業に技術を移管して実用化を目指している。五島市でマグロ養殖を進める実証事業にも協力する。坂口准教授は「高専として地元に貢献すると同時に、水産業をサポートする産業としてIT企業が参入するきっかけにもしたい」と話した。

「長崎の水産業のレベルアップにつなげたい」と話す坂口准教授=佐世保市沖新町、佐世保高専
プランクトンが検出された際に表示される画面(坂口准教授提供)

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