年間大賞「そだねー」

 テニスの錦織圭選手はいっとき、その言葉を「1分に1回くらい」口にしたらしい。弾むような一語をみんなが好んで用いた-そんな感じだろうか。今年の新語・流行語大賞で「そだねー」が年間大賞に選ばれた▲平昌五輪のカーリング女子代表チームが試合中、元気に言うのが耳に残る。メンバーの本橋麻里選手は、大賞の表彰式でこう話した。「ポジティブな言葉だけを発するルールで」やってきた、と▲お互いに同意し、信頼し、うなずき合って、前を向いてきたのだろう。「あおり運転」でも「悪質タックル」でもなく、元気な同意の掛け声が選ばれて、どこかほっとする▲これも流行語の類いなのか、昨今、何かと「平成最後の」といわれる。平成最初、つまり1989(平成元)年の新語・流行語大賞は「セクシャル・ハラスメント」で、最後の年にはセクハラ被害者が声を上げる「#MeToo(ミートゥー)」が候補に挙がった▲流行語は世に連れて。30年ほどのうちに、セクハラ当事者が自ら被害を訴える動きも出てきた。いや、そうなるまでに30年もかかった、と言うべきか▲89年の流行語には「オバタリアン」などもあったが、もう長いこと聞かない。寿命の尽きる言葉あり、ずっと消えない言葉あり。同意と信頼の合言葉、「そだねー」は心のどこかで長生きを。(徹)

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