病巣に強い放射線を集中

室蘭・日鋼記念病院IMRT開始

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身体への負担を軽減

日鋼記念病院が昨年7月に導入したIMRTに対応した放射線治療装置。IMRTは今年11月から開始した
従来の放射線治療(左)とIMRTの違いを示したイメージ図

 室蘭・日鋼記念病院(柳谷晶仁院長)は、コンピューターの助けを借りながら、正常組織への照射線量を抑えつつ、腫瘍部分にだけ放射線を集中して照射する「強度変調放射線治療(IMRT)」を始めた。胆振管内では初で、手始めに前立腺がんに対する治療に用いる。同病院は「患者さんにとってメリットの大きな治療法が、地域で完結できる。より質の高いがん治療を提供したい」としている。

 2008年(平成20年)に保険適用となったIMRTは、多方向から病巣を狙う照射ビームの強弱などについて、コンピューターが高精度でコントロールすることで、病巣のみに強い放射線を集中的に照射する治療法。日本医学放射線学会治療専門医の富田雅義副院長・放射線科主任科長は「臓器の形に合わせて、精密で理想的な照射ができる技術」と説明する。

 これにより、放射線が腫瘍に対して大きな効果を与える長所を保ったまま、周辺の臓器を避けて照射するため、「正常な臓器への『有害事象』の発生リスクを最小限にすることが可能」(富田副院長)だ。
 特に、クルミ大となる前立腺では、凹凸などの複雑な形状に合わせた正確な照射だけでなく、直腸粘膜の潰瘍や出血
、膀胱(ぼうこう)や尿量への影響、勃起障害などの「有害事象」が生じるデメリットを大幅に改善できる―という。
 西胆振医療圏の患者がIMRTを受ける際は、札幌への通院が余儀なくされていた。同病院は、がん治療の放射線分野でも地域完結をさらに進めるため、2017年(平成29年)7月に、IMRTに対応できる放射線治療装置(リニアック)を導入。治療計画条件の検討などの準備を進めた上で、今年11月から、前立腺がんについての臨床運用を始めた。

 前立腺がんのIMRTでは、コンピューター断層撮影装置(CT)の画像などを基に、直腸などを避けながら前立腺にどのように放射線を当てるかなど、ミリ単位で治療計画を立てる必要もある―という。

 このため、同病院では、放射線治療専門医のほか、線量管理のプロ・医学物理士、放射線治療認定看護師、放射線品質管理士、担当診療放射線技師などによる「チーム医療」で進める。今後は、耳鼻咽喉科や口腔(こうくう)外科領域の頭頸(けい)部がん、子宮がんなどへの治療にも用いる計画だ。

 富田副院長は「がんの病巣だけに放射線をより集中的に当てる治療法。身体への負担を軽減し、根治率も上がるのが一番のメリット」と強調。「IMRTを含めた放射線治療を、この地域の多くの患者さんに受けていただけるよう、盤石の体制を整えたい」と話している。
(松岡秀宜)