障害者自立「親が元気なうちに」 「寝たきり芸人」あそどっぐさんが講演 熊本市で障害者の地域生活を考える全国集会

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「親と適度な距離感があることで、より良好な関係になった」と話す「寝たきり芸人」あそどっぐさん=熊本市中央区

 「寝たきり芸人」として人気を集める「あそどっぐ」=本名・阿曽太一さん(39)=は、熊本県合志市で10年余り1人暮らしをしている。そのきっかけは母親が突然、海外赴任中の父親の元へ引っ越したことだった。11月下旬、熊本市で開かれた障害者の地域生活を考える全国集会では「親離れ、子離れ」をテーマにユニークな人生を笑いを交えて語った。(清島理紗)

 あそどっぐさんは、生まれつき筋肉が萎縮し、動かなくなる「脊髄性筋萎縮症」。両親の介助を受けながら育った。26歳のころ、サラリーマンの父親がタイ・バンコクに転勤。1年ほどは単身赴任をしていたが、「海外の一人暮らしは大変だ」と言い出した。それを受けて母親が何の前触れもなく、「私、決めた。タイに引っ越す。あとはお願いね」と宣言。まもなくタイに旅立った。

 「慌てましたねえ。寝たきりとペットの犬、カメを置いて行ってしまったんですから」と振り返る。

 障害者の自立を支援するNPO法人の手を借りながら、ヘルパーを探し、福祉サービスを受けるために行政とも交渉。24時間体制でヘルパーの介助を受けて始まった1人暮らしは「想像以上に大変ではなかった。困ったことと言えば、犬がヘルパーさんに懐かなかったことくらい」

 親の急な決断から始まった1人暮らしだが、ちょうど良い時期だったという。

 「親元で暮らし続けていれば、親はやがて高齢になり、動けなくなる。親も寝たきりになってから『あとはお願いね』と言われても、それはつらい。お互い元気なうちに思い切って決断できて良かった」

 家族の関係もより良くなった。親の介助に頼っていれば、やりたいことがあっても、まずは親の負担を考えてしまう。でも、プロのヘルパーなら遠慮せずに頼める。あそどっぐさんが自立したことで、両親も自由な時間を持てるようになった。「母は最近、ゴルフばかりの毎日。そんな様子を見るのは息子としてとてもうれしい」

 障害者の友人に「子どものころ、ずっと早く死ななきゃと思っていた」と打ち明けられたことがある。親が高齢になって介助できなくなったらどうしたらいいのか、考えると不安でたまらなかったからだという。

 しかし、その友人はあそどっぐさんが自立した生活をしていることを知り、考えが変わったという。実はあそどっぐさんも以前、全く同じ思いを抱えていた。そんなあそどっぐさんを勇気づけたのは、1人暮らしをしている障害者の先輩の姿。「死ななくていいんだ」と考えられるようになったのだという。

 障害がある子どもたちが自由に暮らせる社会になるためには、「僕たちが地域社会で楽しく暮らすことが重要だ」。「寝たきり芸人」が語った生きざまには、強さと笑いがあふれていた。

 「親は親、子は子、お互いの生活をエンジョイできるように、ちょうどよい距離感で過ごすことが大切だと思います」

(2018年12月5日付 熊本日日新聞朝刊掲載)