第245回「ほどなく12月、年末」

日本の美しい情景はここに極まる

どこか侘しい秋

紅葉、黄葉。家の前の神社の、すっからかんになっていく巨大なイチョウに別れを告げながらどこか侘しい。日本人は古来から秋を愛でて来た。秋の音、秋の光、秋の風、秋の空……暑い夏が終わった後の一抹の寂しさ。誰しもが秋に感じる寂寥感は、過ぎ去ってしまったものたちへの郷愁の念か。赤や黄色に色づいた木々たちは風に揺れ、はらはらと舞い落ちる。趣のある落ち着いた美。日本の美しい情景はここに極まる、秋の風に吹かれながら私は立ちすくむ。これから東京は人工のイルミネーションの光が街を覆い尽くす。「わ〜、綺麗」と感動している女子学生を横目で睨みながら、なんとか勘弁してほしいと思う。

さらに12月も末になると、大掃除にカウントダウンコンサートや除夜の鐘、初詣、初日の出、年末年始の慌ただしい日々が始まる。静かな年末と正月を迎えたい私は、ただただ部屋に引きこもるしかない。元日には水彩画を描き、2日には書き初めをすると決意した。

天高く……昭和記念公園の無残

この時期、私は紅葉狩りを含めて東京の郊外の公園に出かけることが多くなった。11月28日、秋の紺碧の青空が広がる日曜日、広大なコスモス畑を見に立川の昭和記念公園へ出かけてみた。8月の日照不足と台風のため、その生育が心配されたが、見事に花開いている公園の写真を見て、行きたくなった。

正門をくぐると銀杏並木が続き、強い香りの銀杏の実を踏みしめて秋のコスモスを見に行くと、そこは悪夢としか思えない光景が広がっていた。公園事務局が粋な計らいをしようということで、「今日に限りコスモス摘み取り自由」にしたらこの有様。広大なコスモス畑に数万人の市民が押し寄せた。みんな無残に花を摘んでいる。ここまで荒らされ、踏み潰されるなんて、コスモスが泣いていたよ。野に咲く花を摘むのは犯罪行為としか思えない。勢いよく摘み取ったコスモス、途中で水をやらなければ、たぶん家に帰るまでにしおれて死んでしまうと思うが。どっちにしても残念な1日であった。

勢いよく摘み取られるコスモス

イノマー氏と石丸元章氏のぶっ飛びに感動!

先月と今月のRooftopのコラムで驚いた。

石丸元章さんは脳卒中でただいま入院中。筋トレをやって走って、サウナで倒れ、救急車で搬送されたという。断固、オーバードーズでの入院ではない。底抜けに明るい石丸さんはリハビリ中だが、果たしてあの饒舌のトークは健在なのか? 戻るのか心配なのである。出来過ぎのお子さんはどうしているのだろうと気になった。ネットを見ている限り、喋れるし、体の機能は回復しているということで、現役復活はもう直ぐらしい。ちょっと安心した。

さて、もっとびっくりしたのは、オーナニーマシーンのイノマーさん。パニック障害~アルコール依存症~口膣底癌で、舌を全部削除する手術をしたらしい。果たして声は出るのか? 舌は切除したが首まで移転してしまっている癌は13箇所、ステージ4と診断されたらしい。底抜けにノーテンキなイノマーさんの記事は、どこかおのれの死を暗示している文章が目立っていて、コラムでは平然とすごいことを書き残しているのだ。

しかも、サブタイトルに「死んだその日が最終回(笑)」とあって、ここまで極限に向かい合ってまでジョークを言えるのか、とびっくりしている。今月、ロフトレコードから20周年記念アルバムも発売されるし、ライブも近い。

でもさ、二人ともまだ若いのに、天性の明るさと大らかさを持っているんだな。根が暗いA型の私はとても真似できないと思う。やはりご両人は偉大だ。イノマーさんや石丸さんの投稿を見ている限り、「なんだか、絶対二人とも死なないよな」と信じるのみなのだ。

来月、イノマーさんと私の対談予定があるのだが、とにかくずっと生きながらえてほしい限りだ。

石丸さんのコラムより、「MRIの前に記念写真」

イノマーさんコラムより「手術室に行く10秒前の自撮り」

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