「高輪ゲートウェイ」どう発音する?

©株式会社全国新聞ネット

山手線の新駅名「高輪ゲートウェイ」を発表するJR東日本の深沢祐二社長=4日、東京都渋谷区

 JR山手線の品川―田町間に新設される駅の名称が「高輪ゲートウェイ」に決まった。私はニュースに接して苦笑を禁じ得なかった一人だが、最近ではカタカナ交じりの駅名や施設名が当たり前のようにさえなり、いまさら嘆いてみせても時代遅れと笑われるだろう。違和感はいずれ薄れていくと思うことにしている。公募の結果を無視したという批判(約6万4千件あった応募数のうち、高輪ゲートウェイは36票)、駅の場所は果たして高輪と呼ぶことが適当かという疑問、ゲートウェイという言葉の意味が分からないという当惑、そもそもセンスが悪いという意見があったこともまた、長く記憶されることはないだろう。

 そこで頭の古い私も、未来に目を向けることにする。高輪ゲートウェイが2020年に開業した時、ホームや車内で聞くアナウンスでこの駅名がどう発音されるか、どう読み上げられるかを考えてみたいのだ。

 なぜそこに注目するのかというと、私がよく利用するJR中央線の「吉祥寺」「西荻窪」「荻窪」「阿佐谷」「高円寺」の各駅が、構内放送、車内放送で異なったイントネーションで読まれているため、聞くたびに気になってしまうからである。

 地元の人はふつう、吉祥寺(きちじょうじ)の「きち」を平らに発音し、「じょう」にアクセントを置く。最初の「じ」を高く上げて最後の「じ」までなだらかに下ろしていく。ちょうど英語の人名「ジョージ」のように。あるいは「常時」「情事」のように。車内放送ではこの抑揚が守られている。しかし構内放送は違う。すべてをフラットに、そして最後の「じ」を伸ばしつつわずかに下げる。従って最後の寺(じ)が爺(じい)のように聞こえる。若者の街として知られる吉祥寺が、読み方のわずかな違いで吉祥爺になる面白さを、いつも楽しませてもらっている。ちなみに、英語の車内放送では「キッチ・ジョウジ」と聞こえる。

 吉祥寺以外4駅の構内放送でも、フラットに読み、語尾を伸ばす方式が、統一ルールになっている。日常の会話では「こう」が高い高円寺も、構内放送では高低のない読み方になる。もしも漢字を宛てるなら「公園爺」とでもなるだろうか。吉祥爺はおめでたいが、公園爺は少しもの悲しい。

 この読み方を高輪ゲートウェイに当てはめたらどうなるだろう。カタカナ表記をそのままフラットに発音し、語尾を伸ばすとすれば「たかなわゲートウエイー」だが、これではさすがに語呂が悪い。少し規則を曲げて「たかなわゲートウエー」に近くなるのではないだろうか。悪くない、と私は思う。のんびりしているから。「ゲートウエー」はどことなく「べんとう~」の売り声を思い出させる。「たかなわ」はすばやく、「ゲートウエー」はゆっくり、なるべく美声でやってもらいたい。

 高輪ゲートウェイに関して未来志向で行くと決めた私は、もう一つの問題について考えてみた。すなわち、この駅の発車サイン音にどんなメロディーを選んだらよいかと言うことである。

 発車サイン音(発車メロディーとも)には、その駅ゆかりの曲と、多くの駅で共通して使われる曲がある。もし高輪ゲートウェイがゆかりの曲を使うとしたら何があるだろう。歌詞に高輪が出てくる曲には、ロス・インディオス&シルビアのムード歌謡「別れても好きな人」(歩きたいのよ高輪~)があるが、この歌には渋谷も赤坂も原宿も出てくるので決定打にはならない。それならば、高輪がかつて月見の名所だったということにちなんで選んではどうか。候補は、文部省唱歌の「月」(出た出た月が~)、ジャズ・スタンダードの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」あたりだ。洋楽で「ゲートウェイ」という曲を探したが、あったと思うとみな「ゲッタウェイ」だった。さて、JR東日本はどういう曲を考えているのだろう。

 最後に、日常会話でこの駅をどう呼ぶかを予想しよう。おそらく「高輪」としか言わないだろうと思うが、ひょっとしたら「じゃあ7時にゲートウェイで」とキザな言い方を好む人がいるかもしれない。心配なのは若者語で「タカゲー」になることだが、もしそうなったら、「高輪ゲートウェイ」の命名者を大いに悲しませることだろう。 (松本泰樹・47NEWSエンタメ編集デスク)