【東名あおり】血が上り「勢いだった」 被告、何も考えず

 神奈川県大井町の東名高速道路で昨年6月、「あおり運転」を受けて停止させられたワゴン車が後続車に追突され一家4人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた無職の男(26)の裁判員裁判の第3回公判が5日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であり、被告人質問が行われた。執拗(しつよう)なあおり運転について被告は、頭に血が上った末の「勢いだった」と述べた。

 事故では、静岡市の男性=当時(45)=と妻=同(39)=が死亡。夫婦の長女(17)と次女(13)が軽傷を負った。

 証言台に立った被告は、中井パーキングエリアで車の止め方を巡って男性に「邪魔だ」と注意されたことがきっかけになったと指摘。「カチンときた。文句を言うために追いかけた」と心境を明かした。

 あおり運転の危険性については、「事故が起こることは考えていなかった」と話し、停車させて謝らせることで頭がいっぱいだったとした。高速道路上に車を停止させたことにも、「何も考えていなかった。危険とは思っていなかった」とした一方、「今は危険だと思っている」とも述べた。

 検察側によると、停車後にワゴン車に詰め寄った被告は、男性の胸ぐらをつかむなどして「高速道路に投げてやろうか」と激高したとされる。この場面について被告は「(本当に)車から降ろすつもりはなかった」と弁明。同乗の女性から「子どもがおるけん、やめとき」と言われてわれに返ったとした上で、涙を流しながら「子どもを巻き込んだら悪いと思って男性から手を離した」と語ったほか、「子どもがいると知っていたらやらなかった」とも話した。

 事故は、自身が車に戻る際に起きたと供述。「記憶がなくなって、気付いたら(追突した)トラックの下にいて自力で出た」と振り返った。近くには男性の妻が血を流して倒れていたといい、声を掛けたが「反応はなかった」とした。

横浜地裁

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