F1 Topic:ガスリーが振り返る2018年、日本人エンジニアとともに全力を尽くした鈴鹿の思い出

 2018年はピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)にとって、特別な一年になったことだろう。初めてF1にフル参戦したシーズンだったからだ。その最後のレースとなったアブダビGPで、ガスリーは少し感傷的になっていた。それは初めてのフル参戦シーズンが終わるだけでなく、トロロッソ・ホンダのドライバーとしても、最後の日になるからだ。

「アブダビGPは僕にとって特別な一週間だった。トロロッソ・ホンダのメンバーとともに戦う最後のレースだったからね。このチームは僕にとって最初にフルシーズンを戦ったF1チームだった」

「僕とチームとの契約は今年いっぱいとなっているけど、僕はアブダビGPが終了した2日後から行われるテストで、レッドブルのマシンを走らせる。だから、アブダビGPのレース日が、チームと過ごす最後の一日となる]

「このチームで僕はF1ドライバーとしていろんなことを学んだし、一緒に成長できたと思う。ここで得た経験はこれからの僕のF1人生にとってとても重要なものになると思うし、彼らとともに過ごした思い出は一生忘れないと思う」

 トロロッソとレッドブル、どちらもレッドブルファミリーだが、チームの雰囲気はどう違うのか。

「トロロッソというチームの特徴は、なんといってもイタリアの家族のようなところ。僕はGP2(現在のFIA F2)でもプレマというイタリアのチームにいたから、トロロッソにもすぐに溶け込めたよ」

「成績がいいときはハイテンションで、悪いときはすぐに落ち込んでしまうけど、僕にはそういう雰囲気は合っていたから、まったく問題なかった。レッドブルのチームカラーはトロロッソとは違うから、そのへんは気をつけないとね」

 ガスリーにとってホンダは、フル参戦ドライバーとして仕事した初めてのパワーユニット・マニュファラクチャーだった。ガスリーにはホンダの仕事ぶりはどのように映っていたのだろうか。

「僕が初めてのフルシーズンをいい形で過ごすことができた理由には、ホンダの存在があったことを忘れてはならない。彼らは昨年、マクラーレンと厳しい関係を経験して、とても難しい状況で今シーズンを迎えていたと思うけど、そういうことを感じさせないくらい、とてもオープンにかつチームとドライバーに対してリスペクトを払って、真摯な態度で接してくれた」

「だから、チームともすぐに打ち解けたし、僕たちドライバーもフィードバックしがいあって、ホンダとの仕事はとても楽しかった。僕はホンダを通して、日本人の精神を理解することができたことも良かった」

トロロッソとホンダのメカニック

■2018年シーズンのピエール・ガスリーにとって記憶に残る出来事とは

 ガスリーにとって、今シーズン最高の思い出は「自己ベストとなる4位を獲得した第2戦バーレーンGP」だが、それ以外にも忘れられないレースがあるという。それは日本GPだ。ホンダの地元である鈴鹿で、納得のいくパフォーマンスを披露できなかったからだった。

 ホンダのスタッフの中で、ガスリーが最も密にコミュニケーションをとり、仕事してきたのが、ホンダのガスリー担当パフォーマンスエンジニアを務めた湊谷(みなとや)圭祐エンジニアだ。

「湊谷さんの仕事に対する熱心な姿勢は僕だけでなく、多くのスタッフからも尊敬されている。彼は最高のパフォーマンスを発揮できるように僕を常にサポートし続けてくれた」

「今年の日本GPのことだった。僕は予選でQ3に進んだけれど、Q3ではストレートの立ち上がりの部分でうまく対応できずにコンマ3秒ロスしてしまって7番手に終わった。もし、完璧なラップを刻むことができていれば、6番手はもちろん、5番手を手に入れることだって可能だった」

「だから、予選後に湊谷さんの顔を見たら、思わずに涙が出そうになったんだ。彼が一生懸命準備してくれたパワーユニットのポテンシャルを、僕がフルに発揮させてあげることができなかったからね。そういう気持ちになったのも、彼が懸命にサポートいてくれたから。来年もできれば、一緒に仕事したい」

 ガスリーは12月9日にホンダのファンイベントに参加するためにツインリンクもてぎにやってくる。それがトロロッソ・ホンダのドライバーとして、公式での最後の仕事となる。しかし、ホンダとの関係はこれからも続く。

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