金属行人(12月6日付)

 会場に8カ国もの国旗を掲げるこの種の催しは珍しい。世界中で鉄鋼や化学プラントの建設・整備を手掛ける山九が先月開いた「グローバル溶接競技大会」。その名の通り、日本だけでなくブラジル、中国、サウジアラビア、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシアの同社拠点から溶接工の精鋭が集い、日ごろ磨いた技を競い合った▼溶接痕のビードを見るだけで良しあしがある程度分かると言うが、素人目には難しい。ベテランに聞くと、やはり日本人の仕上げ方は世界の中でも格段に丁寧なのだという。一方で外国人も負けてはいない。各国とも旺盛なプラント建設需要を背景に日ごろの仕事量は日本より多い。豊富な実践の場が育てた手際の良さは日本人より一枚上手らしい▼この大会は08年から5年に一度開かれ今年で3回目。回を重ねるごとに全体のレベルが着実に上がっていると中村公大社長は評価する。国内外の溶接工同士が切磋琢磨し、刺激を与え合っては互いを高みへ押し上げるようだ▼今大会の結果はまだ精査中。順位をつけるために、外観検査だけでなく放射線試験と曲げ試験も行い、完成品の精度を一つずつ確かめている。世界を股に掛ける企業の基礎技能ほど徹底するという心構えが伝わってくる。

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