水道法改正で熊本県内自治体「民営化」災害時に不安

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熊本地震で熊本市は全戸断水し、市民は給水車から水を受け取った=2016年4月16日、熊本市役所(横井誠)

 自治体の水道事業を立て直すため、運営権を民間企業に委託しやすくする水道法改正案が、6日に成立する見通しとなった。住民の暮らしや命にも関わる水の「民営化」に対し、熊本県内自治体からは「なじまない」「災害時の対応に不安」などの声も上がる。

 熊本市の大西一史市長は4日の記者会見で「市民にとって何がベストかを考えるべきだ。民営化の是非は地域事情で異なるが、熊本市にはなじまない」と明言、民営化を否定した。

 背景には、熊本地震での経験がある。地震直後に全戸断水したが、約2週間で復旧した。

 市上下水道局によると、すべて地下水で賄う市の水道は市内約100本の井戸で水をくみ上げ、点在する設備で水質などを管理。複雑な水道管の経路のコントロールなど、特殊な技術が必要になる。「技術を継承していたからこそ、短期間で復旧できた。水は市民生活に欠かせないライフラインだ」と同局は強調する。

 荒尾市は2016年度、施設管理や水質検査、料金徴収など上水道事業の大半を民間に包括委託した。

 市内の水道管の約8・5%が法定耐用年数(40年)を超えており、その更新費に加えて、水需要の減少で将来は赤字になることが想定されたためだ。5年で約3600万円の経費削減を見込み、長期的視点に立ったアセットマネジメント(資産管理)も委託している。

 市企業局は「市民や議会にも水の安全や安定供給の責任は行政が負うべきという意見が根強い」と説明。田上廣秋企業管理者は「法改正で自治体の選択肢が増えても、市に経営権を残しつつ、民間の力を最大限に活用する現在の方式が荒尾市にとって最善」と話す。

 一方、県内で最も水道料金が高い上天草市。料金は合併前の旧町ごとに異なるが、10立方メートル当たり3132円の大矢野地区の水道料金は全国3位の高さだ。水源の多くを市外に頼るためで、八代市の球磨川や氷川ダムから海底水道管を通して確保しており、多額の経費が必要という。

 「水源に乏しく水道料金は高い自治体に、興味を持つ民間事業者があるだろうか」と堀江隆臣市長。「大都市なら水道管1キロ通すことで数百世帯に供給できるが、上天草は数世帯というところもある。仮に民営化したとしても、料金が安くなるとは思えない」と法改正の効果には懐疑的だ。(熊本総局・高橋俊啓、荒尾支局・原大祐)

(2018年12月6日付 熊本日日新聞朝刊掲載)