ドイツ・グラモフォン創立120周年Special Gala Concert Presented by 小澤征爾 & サイトウ・キネン・オーケストラ公演レポート

(C) Ryota Mori)

クラシック・レーベル「ドイツ・グラモフォン」創立120周年を記念するコンサートが5日夜、東京・サントリーホールで開催された。

チケットは一般発売を開始するやいなや即完売となるなど、音楽愛好家の耳目を集めた本コンサート。
約2000人の観衆が見守る中、桐朋学園の創設者のひとりであり、偉大な教育者であった故齋藤秀雄教授の没後10年にあたる1984年に、彼の弟子である小澤征爾の発案により結成されたサイトウ・キネン・オーケストラによる全5曲、約110分(休憩時間を除く)のコンサートは、前半にサイトウ・キネン・オーケストラを過去3度に渡りゲストコンダクターとして指揮し、国内外で高い人気を誇るベネズエラ出身の指揮者ディエゴ・マテウスが、ロシアの作曲家=チャイコフスキーの楽曲の中でも人気の高い「歌劇《エフゲニー・オネーギン》 からのポロネーズ」と「交響曲 第5番」を指揮。

後半からは14歳でデビューを果たして以来、ドイツ・グラモフォン専属アーティストにして、クラシック界を代表するヴァイオリニストとして活躍するアンネ=ゾフィー・ムターが登場。
音楽の父と呼ばれるJ.S. バッハの名曲「ヴァイオリン協奏曲 第2番」を弾き振り(演奏者が指揮者とソリストを兼ねる演奏形態)で演奏し、その後再度登場したディエゴ・マテウスと、ベートーヴェンの「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス 第1番」を演奏し世界最高峰のパフォーマンスを披露した。

そしてクライマックスは“サイトウ・キネン・オーケストラとアンネ=ゾフィー・ムターの初共演を指揮するのを楽しみにしている“と語っていた小澤征爾が約2年振りにサントリーホールに登場。

“楽壇の帝王“と称された偉大な指揮者=ヘルベルト・フォン・カラヤンに師事した小澤征爾と、ヴァイオリニストとしての才能を見出されたアンネ=ゾフィー・ムターという所縁の深い2人の夢の共演が実現。
ヴァイオリンの独奏とオーケストラによる協奏的な楽曲の中でも、世界中のクラシック・ファンの間でとりわけ人気が高く、また実写映画化やアニメ化で話題を呼んだ人気漫画『四月は君の嘘』でも取り上げられたことで、幅広い層に親しまれているサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」を披露し喝采を受けた。

終演後、この夢のような共演を振り返り、アンネ=ゾフィー・ムターが「100回共演したいわ。」とコメントし、それに応えるように小澤征爾氏も「とても素晴らしかった。楽しかったよ。」と語った。

日本を代表するオーケストラとして世界中で評価されているサイトウ・キネン・オーケストラにとっても約17年11ヶ月振りとなる東京でのコンサートとなった本公演は、まさに“奇跡の一夜"と呼ぶにふさわしい内容となった。
また、本公演の模様は来年1月から順次、ドイツ・グラモフォンより全世界でリリースされる予定となっている。

< 公演概要 >
タイトル:ドイツ・グラモフォン創立120周年Special Gala Concert presented by 小澤征爾 & サイトウ・キネン・オーケストラ
(英:Deutsche Grammophon 120 Special Gala Concert presented by Seiji Ozawa and Saito Kinen Orchestra)
日時:2018年12月5日(水)19:00開演
会場:サントリーホール 大ホール(〒107-8403 東京都港区赤坂1-13-1)
主催:ドイツ・グラモフォン
共催:ユニバーサル ミュージック合同会社 / 公益財団法人 サイトウ・キネン財団
企画制作/アーティスト・マネージメント:株式会社ヴェローザ・ジャパン
協賛:GVIDO MUSIC株式会社(寺田倉庫グループ)
協力:朝日新聞社
出演者
・小澤征爾(指揮)
・アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
・サイトウ・キネン・オーケストラ (メンバー総勢82名)・ディエゴ・マテウス(指揮)
曲目
(1)チャイコフスキー:歌劇《エフゲニー・オネーギン》 作品24 ポロネーズ 
(オーケストラ79名 / コンサートマスター:小森谷巧)
(2)チャイコフスキー:交響曲 第5番 ホ短調 作品64
(オーケストラ81名 / コンサートマスター:豊嶋泰嗣)
【指揮:ディエゴ・マテウス / サイトウ・キネン・オーケストラ】
(3)J.S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ホ長調 BWV1042
(オーケストラ23名 / コンサートマスター:後藤和子 / 弾き振り:アンネ=ゾフィー・ムター)
(4)ベートーヴェン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス 第1番 ト長調 作品40
(オーケストラ47名 / コンサートマスター:田中直子)
【指揮:ディエゴ・マテウス / サイトウ・キネン・オーケストラ / ヴァイオリン独奏:アンネ=ゾフィー・ムター】
(5)サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 作品28
(オーケストラ53名 / コンサートマスター:豊嶋泰嗣)
【指揮:小澤征爾 / サイトウ・キネン・オーケストラ / ヴァイオリン独奏:アンネ=ゾフィー・ムター】
舞台装飾 : 東信 (JARDINS des FLUERS)

出演者プロフィール
小澤征爾
1935年、中国のシャンヤン(旧奉天)生まれ。幼いころからピアノを学び、桐朋学園で齋藤秀雄に指揮を学ぶ。59年、仏ブザンソン指揮者コンクールで第1位を獲得。シャルル・ミュンシュの他、カラヤン、バーンスタインに師事。ニューヨーク・フィル副指揮者、サンフランシスコ響音楽監督などを経て、73年にボストン交響楽団の第13代音楽監督に就任。米国オーケストラ史上でも異例の29年という長期にわたって務め、オーケストラの評価を国際的に高めた。2002年秋には、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任、2010年春まで務めた。
日本においては、サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)を恩師齋藤秀雄を偲んで1984年に組織。92年より、国際的音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ 松本フェスティバル)」へと発展させ、総監督に就任(~継続中)。
小澤国際室内楽アカデミー奥志賀、小澤征爾音楽塾、Seiji Ozawa International Academy Switzerlandを設立し、若手演奏家の教育活動にも力を注いでいる。水戸室内管弦楽団の総監督を務めると共に、2013年からは水戸芸術館館長も務める。

アンネ=ゾフィー・ムター
ドイツのラインフェルデンに生まれ、カール・フレッシュ門下のエルナ・ホーニヒベルガー及びアイダ・シュトゥッキに師事。1976年ルツェルン音楽祭の世界デビューがカラヤンの目に留まり、翌77年ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭に招かれベルリン・フィルと共演し国際的な活躍を始める。1978年、ドイツ・グラモフォンにカラヤンと初録音、以降数々の名盤を生み出し、それらは4回のグラミー賞の他、多数の賞に輝いている。
伝統的な作品に加え、現代のレパートリー開拓にも余念がなく、デュティユー、ルトスワフスキ、ペンデレツキら多くの作曲家から作品を捧げられている。
また、医療問題や社会問題にも強い関心を寄せ、数多くの団体を支援している。その他、若い音楽家の支援・育成にも情熱を注いでいる。
ドイツ連邦共和国功労十字勲章一等、レジオン・ドヌール勲章、バイエルン功労十字勲章など、その演奏家としての実績と人道的行為に対して数多くの賞を受けている。2018年には、サンタ・チェチーリア国立アカデミーの名誉会員に任命され、ポーランドより文化名誉勲章が授与された。

サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO) 
偉大な教育者であり桐朋学園創設者のひとりである、故齋藤秀雄の没後10年となる1984年に、弟子の小澤征爾の発案により、門下生100余名が集まり開催したメモリアルコンサートが礎となって生まれたオーケストラ。87年にSKOとして初の欧州ツアーを行い、その後も各地に招待され、“幻のオーケストラ"と称された。齋藤秀雄生誕90年の1992年、念願であった“日本に腰を据えた音楽祭"として「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ 松本フェスティバル)」が松本市で開幕。総監督小澤征爾とSKOが中心となり、毎夏、交響曲とオペラを軸に音楽祭を開催している。
※SKOが東京で公演を行ったのは、2001年1月2~4日に東京文化会館で行われたサイトウ・キネン・フェス
ティバル松本“冬の特別公演"以来、約17年11ヵ月振り。(演目:マーラー:交響曲第9番 ニ長調)

ディエゴ・マテウス
国際的に知られるベネズエラのエル・システマを卒業し、南北米でもっとも将来を期待されるアーティストの一人として広く注目されている。2011年9月より15年までフェニーチェ歌劇場の首席指揮者。2013年より2016年までメルボルン交響楽団の首席客演指揮者。優れたオペラ指揮者として知られ、最近ではトリノ王立歌劇場、ペーザロ・ロッシーニ・オペラ・フェスティバルで指揮をしており、オーケストラとの今シーズンの共演は、ブリュッセル・フィル、BBCフィル、ボルドー・アキテーヌ国立管、スイス・イタリアーナ管、ワルシャワ・フィルなどがある。サイトウ・キネン・オーケストラとは2011年、2014年、2018年にゲストコンダクターとして共演している。

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