カニ入ってないのに「かにぱん」

 根強い人気なぜ? お姉さんに聞く 長寿の秘密(2) 

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関かおり

共同通信

関かおり

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2013年入社。名古屋支社、静岡支局、浜松分室を経て47ニュース編集部に。将来の夢は忍者。

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 カニの形でシンプルな味の「かにぱん」。三立製菓(浜松市)が44年間製造し続けているロングヒット商品だ。コンビニやスーパーの定番商品としてなじみ深いが、最近では災害時の備蓄品としても見直されつつある。現在も売り上げが伸びているといい、その根強い人気の秘密を同社の「かにぱんお姉さん」に聞いた。

 かにぱん教室

 まず今回取材に応じてくれたかにぱんお姉さんを紹介しよう。ピンクのコスチューム、カニのぬいぐるみがついた帽子、かにぱんの形のポシェット。前衛的なファッションの彼女は、かにぱんの国からかにぱんの雲に乗ってやってきたが、ある日うっかり雲から落ちてしまった。…という衝撃的な設定で活動している同社企画課の望月沙枝子さん=年齢非公開=。人間界で家庭科の教員免許を取得した経験を生かし、静岡県内を中心に各地の保育園や幼稚園などで「かにぱん教室」を開いている。

 教室では「ちぎって別の形にすることが知育になる」との考えから、歌や紙芝居で子どもたちにかにぱんのちぎり方を伝えている。この楽しみ方は2000年ごろに消費者の間で広まり、今は同社のホームページ内の「ちぎってかにぱん」で、トンボや携帯電話(昔懐かしいガラケー)など様々なちぎり方を紹介している。

かにぱん教室の風景

 かにぱんの現在のラインナップは、定番のかにぱん、サイズの小さい「ミニかにぱん」、季節限定で売られているチョコレート味の「ミニかにぱんチョコ」の3種類。いずれも原材料にカニは含まれていない。「甲殻類アレルギーの方でも安心してお召し上がりいただけます」とお姉さん。カニの形だからかにぱんなのだけれども、そもそもなぜカニなのか? 猫とか犬とかのほうがよくない?

 ルーツはカンパン

 かにぱんのルーツは昭和の初めにさかのぼる。当時、同社の主要商品はビスケットだったが1937年、旧陸軍の要請を受け、製造設備を利用して軍用の携帯食料を製造した。今も災害時の非常食として知られる「カンパン」だ。同社はその技術を応用し、菓子パンの製造に乗り出した。

 カンパンをルーツに持つ同社のパンには「日持ちがする」という強みがあった。現代ほど物流が発達していなかった時代、保存性の高いパンは販売店に広く受け入れられ、販路を拡大。1974年にはかにぱんが登場し、たちまち人気商品に成長した。当初、カニの他にパンダやウサギ、SL、キャラクターなど、様々な形のパンが売り出されていたが、兄弟の中で生き残ったのはかにぱんだけだった。お姉さんは「はっきりした理由はわからない」と首をかしげ「日本人にとってカニという生き物がなじみ深かったのでは」と推察する。

 味はニーズに合わせて少しずつ変わっている。最低でも2年に1回は細かいリニューアルを繰り返しているという。昨今の健康ブームに乗り、ことし7月には生地に乳酸菌を入れた。ここ10年以上なかった大きな変化だ。

 現在もかにぱんの売り上げは伸びているという。保存期間が45日と長いことから、災害が相次ぐ昨今、備蓄品としても見直されつつある。6月の大阪北部地震の際には発注が増えた。さらにSNSでかにぱんを使ったおしゃれなサンドイッチの写真をアップする人もいる。同社でもフレンチトーストなどアレンジレシピを紹介し、活用の場を広げている。

 課題は〝後継者不足〟?

 しかし、日持ちがするという反面、口に入れたときに水分が少なく感じる弱みもある。今後は保存性を損なわないように味を改善するのが課題だ。お姉さんは「クリームとかチョコレートとか、かにみそ的なものがパンの中に入る可能性もあります」と話しており、今後、味のバラエティが増加するかもしれない。

 また、かにぱんお姉さん自身の課題は〝後継者不足〟だ。後輩に「コスチュームを着てみなよ」と勧めても「いや結構です」とばっさり断られてしまう。今後は腹話術や手品などさらに子どもたちに喜んでもらえる出し物を増やしつつ、後輩の育成にも取り組みたい考えだ。

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