宮坂国人財団=イミグランテス環境公園開園=総工費1400万レ、社会に恩返し=自然保護教育で活用を

除幕式に臨んだ関係者

 構想から完成に至るまで10年――宮坂国人財団(西尾ロベルト義弘理事長)による初の独自事業『エコロジコ・イミグランテス公園』が、来年1月にいよいよ開園する。厳しい環境規制により認可取得に難航し、2013年から総工費約1400万レアル(約4億600万円)を投じて建設された。ブラジル日本移民110周年、同財団設立20周年の節目に、ブラジル社会への〃贈り物〃となった。

 サンパウロ市からサントスへ下る途中、サンベルナルド・ド・カンポ市のイミグランテス街道沿いに広がる大西洋森林に同園は位置する。絶滅危惧に瀕する原生林と動植物を保護し、エコツーリズムや環境教育に利用することを目的に造園された。
 先月29日の開園式で挨拶した西尾理事長は「この事業は我々の祖先を温かく受入れたブラジルに対する感謝を示したもの」と話し、開園までの経緯を振返った。
 「感謝」「おもてなし」「もったいない」を建設の原則として、徹底的な環境配慮とバリアフリーを実現。建設には9割以上のリサイクル材を使用し、施設で使用される電力は太陽光、風力発電で賄われるなど、国際的認定団体から環境建築物認証「AQUA-HQE」を取得した。

バリアフリー化された遊歩道(撮影・望月二郎)

 484平方キロの敷地面積のなかには440メートルの遊歩道やケーブルカーが敷かれ、車椅子でも利用可能。難度の異なる6つの散策コースがあり、ガイドの案内で自然に触れながら学ぶことができる。
 西尾理事長は「利用客が有効に施設を活用され、ここでの活動を通じて科学教育分野において実を結ぶことを願いたい」と話した。
 野口泰在聖総領事は「自然保護の意識を高めるとともに、その教育にも寄与する。若者や子供達が多く訪れ、日伯友好の象徴となることを願いたい」と挨拶。
 オルダンド・モランド同市長は「我が市のみならず、国全体にとって輝かしく、重要な贈り物。感謝に堪えない」と感謝し、「日本移民は大きな教訓を与えてくれた。他者のために尽くす精神は素晴らしい」と賞賛した。水源のビリングス湖や大西洋森林の保護に市が力を入れていることに触れ、「この公園で自然の美しさを愛でるだけでなく、次世代に残すために自然保護の心を涵養する場所となれば」と期待を寄せた。

大西洋森林ならではの植生に触れられる(撮影・望月二郎)

 記念プレートの除幕式に続き、日伯両国の友好発展を祈念してイペーと桜を記念植樹。その後、招待客は施設職員の案内で園内を散策した。
 施設管理費は年間60万レアルほどで、同財団が拠出する。講堂や多目的ホール、デジタル図書館を擁した円形状の技術研究センター「セル」の建設が残っており、引き続き企業を中心に資金を募っていく。
 入園は無料だが要事前予約。今月10日から、同財団サイト(http://www.parqueecologicoimigrantes.org.br/)を通じて予約受付を開始する。開園は翌年1月から。

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