【南武線踏切事故】鉄道事故、年末に増えがち「警戒を」

 飲酒の末に鉄道事故に巻き込まれるケースが後を絶たない。川崎市多摩区のJR南武線稲田堤駅近くの踏切で6日夜に起きた事故で、犠牲になった2人はふらつきながら遮断機をくぐったとの目撃情報もあり、鉄道事業者側は飲酒の機会が増える年末は特に警戒が必要と指摘する。地域住民からは、現場となった踏切の構造上の危険性を指摘する声も上がる。

 国土交通省によると、2016年に起きたホームからの転落事故は2890件で、うち1781件が酔客絡みの事例だった。17年も2870件のうち1900件を占め、ここ5年間はほぼ6割前後で横ばいとなっている。

 忘年会シーズンの年末に増える傾向にあり、JR東日本横浜支社によると、ホームからの転落事故は12月が最多。時間帯では午後9時~午前0時に集中している。首都圏の鉄道事業者でつくる関東鉄道協会は「プラットホーム事故0(ゼロ)運動」を10日から来年2月9日まで展開。ポスターや駅構内の放送で注意喚起を促し、「危険を感じた時は非常停止ボタンを押してほしい」と呼び掛ける。

 一方、現場の踏切は稲田堤駅に隣接し、駅舎と改札が線路の片側にしかない構造上の特性がある。到着間際の電車に乗りたい人が、遮断機が下りていながら踏切を渡ろうとする場面は日常茶飯事という。

 市などは24年春までに自由通路を新設して橋上駅舎化する計画を打ち出している。神奈川県警多摩署は「通学・通勤の時間帯は特に横断してしまう人が多い。少しでもゆとりをもって通過してほしい」と述べ、パトロールの強化も検討するとしている。

2人の男性会社員が電車にはねられた「観光道踏切」=川崎市多摩区稲田堤1丁目

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