【東名あおり】被告同乗者「止めたが…自分もパニックに」

 神奈川県大井町の東名高速道路で昨年6月、「あおり運転」を受けて停止させられたワゴン車が後続車に追突されて静岡市の一家4人が死傷した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた無職の男(26)の裁判員裁判の第5回公判が7日、横浜地裁(深沢茂之裁判長)であった。被告の元交際相手で事故時も同乗していた女性が証人として出廷。「罪をちゃんと償い、二度とこんなことをしないでほしい」と涙声で話した。

 証人尋問で女性は、被告が以前から相手の運転態度に腹を立て、あおり運転を行っていたと証言。今回の事故直前に、亡くなった男性=当時(45)=が中井パーキングエリアで被告の駐車方法を注意した場面を、「被告が怒ると思った」と回顧した。

 亡くなった妻=当時(39)=が運転するワゴン車を被告が追い掛けた時には、「『くだらん、相手せんでいい』と言った」と説明。車の停止後、被告が男性の胸ぐらをつかんで怒鳴り始めた際も、「被告の腰に手を回して止めようとした」と振り返ったが、聞く耳を持たなかったという。

 検察側が、もっと強く被告を制止することも可能だったのではと問うと、「できたと思う」と返答した一方、「私もパニックになっていた」とも語った。

 この日は被告の父親の証人尋問も行われ、亡くなった夫妻や遺族に対して「大変申し訳ないことをした」と謝罪。「自分の行為を十分に反省し、今後どうするか考えてほしい」と被告に反省を促した。

 女性や父親の証言中、被告は鼻を赤くして涙を流し、手にしたハンカチで目元を押さえるなどしていた。

横浜地裁

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