アメリカの大学生 原爆どう捉えた? 被爆者と意見交換 核禁条約 どの国も参加を/謝罪し過去乗り越えるべき

 米シカゴ・デュポール大で原爆や平和を学ぶ学生16人が現地学習のため、被爆地長崎を訪問している。核兵器禁止条約の誕生で世界に核廃絶の潮流が生まれた一方、核抑止力を強化する米国ではいまだに「原爆投下正当論」があるとされる。米国の若者は核兵器や原爆をどう捉えているのか。被爆体験講話の傍聴と長崎市長との意見交換を取材した。

 「被爆国の日本が核禁条約に参加していない状況をどう思うか」。6日、長崎市役所で、2年生のネイト・ワイマースカークさん(20)が田上富久市長に率直な疑問をぶつけた。「被爆体験は世界に広まっていないのでは」「被爆地の首長として原発をどう考えているか」。約20分間の意見交換では、学生たちの核への関心や興味が現れていた。
 ワイマースカークさん自身は「禁止条約にどの国も参加し、米政府に核削減を働き掛ける必要がある。核兵器に頼った外交はなくすべき」と考えているという。
 学生たちは、広島市出身でデュポール大准教授の宮本ゆきさん(50)が展開する原爆に関する「広島・長崎講座」の受講生。原爆や核問題を学ぶため、先月下旬に来日。広島を経て5日、長崎入りした。
 7日は、長崎原爆資料館で被爆体験講話を聴いた。講話したのは、入市被爆し放射線の影響で家族を亡くした森口貢さん(82)。2年生のジェイド・ライアーソンさん(19)が「米国は国として原爆投下を謝罪するべきだと思うか」と問い掛けると、森口さんは「核兵器を使わないと約束してほしい」と答えた。「被爆者はどんな差別を受けてきたのか」「私たちに米国で最も伝えてほしいことは何か」という質問もあった。
 ライアーソンさんは「原爆の悲劇が二度と繰り返されないためにも米国が謝罪して過去を乗り越えるべき」と話した。
 宮本さんは「米国の若者の間では原爆投下を良くなかったと思う人が多くなっている。だが核の非人道性を理解している分、他国に核兵器を使われたら困るので自国も核保有が必要だとする考え方は王道だろう」と分析。「被爆地の学習で核の危険性を当事者意識で考えるようになり、核廃絶につながれば」と話した。 一行は10日まで滞在予定。

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