家族呼んで暮らしたい 製造現場で働く技能実習生 日本語の習得に不安も

 巨大な工場の中に大型の機械や鉄骨がびっしりと並ぶ。県内最大規模の鉄骨(鋼構造物)製造業、岩永工業(西彼時津町)の工場では、約60人が溶接や組み立て作業に従事している。このうち約3割はインドネシアからの技能実習生だ。彼らは現場にすっかりなじみ、黙々と作業をこなしている。
 「日本は技術が高いし、いいところだから」。溶接技術を学ぶために来日したアエス・ヨゴ・プリアムボドさん(23)は、来月で3年間の実習期間を終える。将来の目標は「インドネシアに溶接工場を造ること」。将来的な実習延長も視野に「できるなら、もっと日本で頑張りたい」と話す。
 同社は10年以上前から、親日国とされる同国の技能実習生を受け入れている。現在は16人。ベテラン従業員が丁寧に指導し育てている。管理本部管理グループの山下順史グループ長は「彼らはハングリー精神があり優秀。技術の習得も早い」と高く評価する。
 建設業界では人材不足が続いており、同社にとって彼らは不可欠な存在。言葉以外は日本人従業員と変わらないとして、待遇も日本人とあまり差はない。「(新制度によって)技術習得後に残ってもらえるようになると大変ありがたい」と、外国人労働者の受け入れ拡大の動きを歓迎する。
 新制度では、一定の技能を持つ「特定技能1号」と熟練者対象の「特定技能2号」を創設。建設業は、家族の帯同を認め、条件を満たせば日本で住み続けられるようになる「2号」の対象でもある。現時点で対象職種は不透明だが「溶接」なども含まれる可能性は高いとみられる。
 実習2年目のアディ・トリ・ウィトノさん(31)は、母国に妻と2人の子どもを残して単身で生活している。「向こうは仕事が少ないから。家族のために頑張る」。毎日、家族との電話で寂しさを紛らわせる。月給は残業代も含めて17万~21万円程度。母国の給与水準よりも高いという。新制度創設の動きは「全く知らない」としながら、「もし家族を呼べるのならば日本で暮らしたい」と漏らした。
 ただ、仮に「2号」の技術水準に達したとしても、言語の問題が残る。来日前後に受け入れ機関などによる日本語研修を受けているとはいえ、「平仮名と片仮名は読めるけど漢字は分からない」(アエスさん)。外国人にとって日本語の習得は簡単ではなく、不安も大きい。
 実習生の多くは「長崎で(インドネシア人が)日本語を習える場所が見つからない」と口をそろえる。同社は実習生に日記を提出させたり、社員と交流の機会を設けたりと、語学力アップに向けた取り組みを続ける。山下グループ長は「今後、外国人労働者を増やしていくならば、国や自治体が主導し、彼らが継続的に日本語を学べるシステムを整えるべきだ」と訴える。

◎外国人労働者 県内は5555人

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、来年4月の新在留資格創設を盛り込んだ入管難民法改正案が8日未明、参院本会議で可決、成立する見通しとなった。県内で働く外国人は5555人(昨年10月末現在)。県内でも人手不足解決の「切り札」として雇用拡大への期待は大きい。技能実習生らも「長崎で働き続けたい」と夢を膨らませる。一方、「議論が拙速だ」「まずは実習生の人権問題の解決を」との声も聞かれた。

工場の中で黙々と作業をこなす技能実習生=時津町、岩永工業

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