押し付けず、子に寄り添う 自閉症児の母・立石さん講演

 知的障害を伴う自閉症の長男(18)を育てる立石美津子さん(57)=東京都世田谷区=が6日、子育てをテーマに、横須賀市生涯学習センター(同市西逸見町)で講演した。立石さんは長男との触れ合いを通し、親の価値観を押し付けず、その子に寄り添う大切さを説いた。

 長男は幼少時、自閉症と診断された。立石さんは当初、その診断を受け入れることができず、病院をいくつも駆け回った。その後、都内の精神科に一時、通院させたが、二次障害で鉄格子のある病棟で過ごす少年を見掛け、障害を受け入れる決心をしたという。

 立石さんは発達障害のある子どもの育て方として、▽嫌な思いはさせない▽平均値を押し付けたり他の子と比較したりしない▽否定しない-などをエピソードを交えつつ挙げた。

 聴覚が過敏で、風で手を乾かすハンドドライヤーの音を怖がる長男のため、立石さんは設置されていない公衆トイレがあるかを調べた。「小さい時に安心や安全を与えることで、こだわりが少なくなって嫌な物を受け入れられるようになる」と立石さん。笑顔でドライヤーを利用する中学生の長男の写真も披露した。

 小学校の運動会を欠席した翌年、長男は観客として参加した。立石さんは「1年前と比べると成長している。そうすると褒めることもできる」と説いた。

 「騒がないで」は「小さい声で言おう」にするなど、言い方を変えることで伝わりやすいという。立石さんは「障害児の子育てだけでなく、全ての人間関係で否定形を使うと相手は動かない」と訴えた。

「子どもを変えようとするのでなく、大人の見方を変えることが大事」などと話す立石さん=横須賀市生涯学習センター

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