「やっぱり不安定な職業なので…」現役ユーチューバーが中学生に伝える夢と現実

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去る12月1日、千葉県浦安市 日の出中学校の1年生を対象に、職業について考えるイベント「働クエスト」が開催された。

日の出中学校では毎年の恒例行事となっている「働クエスト」。保護者の方を中心に結成された「日の出中学校サポーターズクラブ」が運営を行う。

当日は、メーカー勤務の営業マンや銀行員、フットサル選手や料理人など、総勢20人の社会人が講師をつとめる。約半数は日の出中学校の卒業生だ。

今回は初となる「職業=ユーチューバー」のブースが用意された。今や将来なりたい職業ランキングでも定番となったユーチューバー。その現実を中学生向けにどのように伝えるのだろうか?

講師をつとめたのは「音楽系ユーチューバー」の磯田怜さん。現役音大生として勉学に励む傍ら、プロダクション「E-DGE」に所属し活動する。当日の講義の模様をレポートしたい。

友達が動画を勝手に公開して...

働クエスト(浦安市立日の出中学校)

磯田さんがYouTubeを始めたのは中学2年生のとき。きっかけは「偶然」だったという。

「やってはいけないことではあるのですが、友人が僕の動画を勝手にYouTubeにアップロードしたんですよね(笑)。その動画がたまたま好評だったのが、今のような仕事に結びついたきっかけです」

YouTubeチャンネル -【REI TV】磯田怜

収入はいくらですか?
授業は学生からの質問に答えるインタラクティブな形式で進められた。

「YouTubeだけだと生活できない気がするのですが...」
「収入はどのように得るのですか? 収入はいくらですか?」

率直な質問に、一つ一つ答えていく。

「ユーチューバーが動画で収入を得る方法は二つ。動画の間にGoogleと提携した広告を流し、再生回数に合わせた収入を得るか、企業から宣伝費用をもらって商品CMを作るかです。

ユーチューバーとしてご飯を食べて、一般の仕事と同じような収入を得られる人はほんの一握り。

だからこそ夢がある職業とも呼ばれるのですが、生半可な気持ちで始めるのは危ないし、収入が不安定なのは確か。僕も他の仕事に転向できるよう、勉強もしながら中学・高校と活動を続けてきました。

なので、一つのことに絞るのは避けたほうが良いです。もしやるなら、まずは勉強もしっかりやった上で、空いた時間にやってみるのが一番良い。そうすれば、ユーチューバーに反対する親だって説得できると思います」

YouTubeに動画をアップロードするまでには、一連の制作工程がある。磯田さんは実際にスマホでメモしている「ネタ帳」を紹介しながら、企画の立て方から編集に至るまでを解説する。

「普段は散歩しながら企画を考え、面白いと思うものをメモするんです。メモを元に脚本も書いてますね。ネタ出しは一瞬で終わらせるのですが、編集は時間をかけてます。もう7年くらい動画編集は続けていますが、やればやるほど凝りたくなってきます。

僕は音大に通っているので、他のユーチューバーのように毎日投稿はできません。その分更新ペースは遅くても、質の良い動画を出そうと思っています。ネタ考案から構成、撮影、編集してアップロードまでを1〜2週間スパンでやっています。難しさの種類は工程ごとに違いますが、一番ハードなのが編集。しかも編集は続ければ続けるほど、時間をかけたくなってくる」

炎上やチャンネルのクローズを避けるべく、企画を作る上で気をつけなければいけないこともあるという。

「大前提としては、YouTubeのルールを守ること。誰かを傷つけたり、暴力的・犯罪的な描写で再生数を伸ばすことはしません。あとは音楽を扱っているので、著作権には気をつけています」

そして、生き残るには差別化が重要と語る。

「今や動画をアップすれば誰でもユーチューバーになれます。生き残るには、企業に広告で使いたい、と思わせることなんです。そのためには動画のクオリティを上げるだけではなく、人と違うところを用意することが大事。

例えばピアノを弾ける人はたくさんいるし、作曲ができる人も多い。その中でも面白い切り口を見つけたり、さらに多くの特技を身につけたりするなど、オンリーワンになるのが重要なんです」

不安定な職業だからこそ...
授業ではピアノを使い、生徒たちのアイデアを生かした即興アレンジを披露。現場で次々と企画が生み出され、学生たちは目を輝かせていた。

学生たちに将来の夢をたずねたところ、「ユーチューバー」「サッカー選手」などの回答とともに「ありません」と答える学生も。磯田さんは自身の体験を語る。

「私も中学時代は夢がありませんでした。14歳のときに動画を勝手にアップされたときも、まだこの道で頑張ろうという気持ちは無かったし、遊びだと思っていました。そして音大に進み作曲を勉強しているうちに、動画を作ることが仕事になっていった。僕は夢を達成しようと思って達成したわけじゃないんです。

でも、やりたいこととお金が結びつく人って一握りしかいないからこそ、みなさんには是非、やりたいことと将来の職業を結びつけてもらいたいなと思います」

授業を終えて磯田さんは「中学生を教えるのは非常に難しい」と振り返りながら、伝えたかったポイントを話してくれた。

「ユーチューバーという職業はやっぱり不安定です。いつ無くなってもおかしくない職業。他にも生かせるようなコネクションなど、キャパシティを広げておくのが重要だということは伝えたかった。勉強さえできていたら、親だって何も言わないんです。親を心配させるのが一番親不孝だと思います。」
(文・高木望)