日本最大の天体望遠鏡や登録有形文化財の建物も。国立天文台三鷹キャンパス:日本と世界のサイエンスミュージアム

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日本全国あるいは世界中に、大人も子どもも楽しめるサイエンスミュージアムが数多くあります。しかし、これほど私たちの身近にありながら、どこにどういうものが展示されているかわからず、なかなか行けないという人も多いのではないでしょうか。ここでは国内外のサイエンスミュージアムについて、実際にいろいろな博物館や展示会を巡っている筆者が紹介していきます。第一回は、国立天文台を訪ねます。

国立天文台の本部は三鷹にある

新宿から電車で30分、バスで30分ほどの東京都三鷹市内に、日本の天文学研究の中心である国立天文台(National Astronomical Observatory of Japan)の本部、三鷹キャンパスはあります。三鷹市は、JAXA(宇宙航空研究機構)の本部がある調布市と隣接しているだけでなく、終戦後1952年(昭和27年)まで航空関連研究が禁止されていた中、1955年(昭和30年)にいち早くロケット研究を再開した東大生産技術研究所の糸川英夫博士がペンシルロケット(23cmの小型ロケット)の発射実験を行った国分寺市も近く、このエリアが日本の宇宙研究と強く結びついていることを感じさせます。

ちなみに小惑星探査機はやぶさの目的地となった小惑星イトカワは糸川博士に由来しています

国立天文台正門

国による天体観測は1872年(明治5年)に海軍観象台が港区南麻布に設置されたのがはじまりで、1888年(明治21年)に東京帝国大学(現 東京大学)東京天文台が国立大学付属の天文台などと統合再編され、1988年(昭和63年)「大学共同利用機関法人自然科学研究機構 国立天文台」となりました。

三鷹キャンパスは1914年(大正3年)に工事がはじまったとのことで、その歴史を感じさせる重々しい佇まいの正門を入ると、すぐ右手に守衛所があります。この正門も守衛所も国の登録有形文化財となっており、天文学と建築の歴史を一緒に見れる場所であるとわかります

登録有形文化財になっている守衛所

守衛所で受付を済ませると、見学者を示すワッペンをもらえるので胸に貼ります。また、スマートフォンでアクセスできる無料の音声ガイドが利用できます。音声ガイドのトピックは、一つ1分程度に収まっており、見学のペースを乱さないだけでなく、到着前に予習を兼ねて聞いておいたり、後で聞き返して復習もできるので、非常にオススメです。受付には無料Wi-Fiについても掲示されており、見学時の利用にも配慮されています。

国立天文台 三鷹キャンパス 音声ガイド

毒蛇に注意

受付でもらったガイドを元に回ることになりますが、見学コースとして記載されているところ以外は決して立ち入らないようにしましょう。構内は緑が豊富で散歩する人もいる一方、毒蛇も出るそうです。また、動植物採取禁止の掲示もあり、樹木の保存に努めています。

この緑の豊かさを感じながら、構内をゆっくり歩いて2時間程度で巡ります。各施設によって説明員がいることもありますが、どの施設にいるかは日によって異なるようです。

毒蛇やまかがしに注意の張り紙が

登録有形文化財の「太陽塔望遠鏡」

1930年(昭和5年)に作られた太陽塔望遠鏡(通称 アインシュタイン塔)は、この塔自体が望遠鏡の筒の役割をしていて、普段「天体望遠鏡」という言葉からイメージする形とはだいぶ異なるものになっています。

太陽の光を天井から取り入れ、塔の中で反射させて7色のスペクトルに分解してその光を研究する施設です。ポツダム天体物理観測所(ベルリン、ドイツ)にあったアインシュタイン塔と研究目的が同じだっため、別名でアインシュタイン塔とも呼ばれています

太陽塔望遠鏡(通称 アインシュタイン塔)。中には入れない

また、外壁は釘で筋をつけたスクラッチタイルというもので、この建物も登録有形文化財となっています。先進的な研究施設に合わせて、その当時の先進的なデザインが施されたことがわかります

日本最大の屈折望遠鏡がある「大赤道儀室」

大赤道儀室には、レンズ直径65cm、全長10m以上という日本最大の屈折望遠鏡が設置されています。1929年(昭和4年)に製作され、1998年(平成10年)まで利用されていたそうです。

ちなみに赤道儀とは、地球の自転軸と同じ方向に動く回転軸(極軸)と、それに対して直角に動く回転軸(赤緯軸)の2つの回転軸をもった天体望遠鏡で、天体の動きに合わせて追跡できることが特徴となっています。

日本最大の屈折望遠鏡

90年の歴史を経て一度生まれ変わった「ゴーチェ子午環」

南北方向に建つ半円形の建物にはゴーチェ子午環が収められています。子午環とは天体の南中時刻を正確(ちょうど真南に来る時刻)に測定するための観測機器で、ここのゴーチェ子午環は1903年(明治36年)に製作されました。驚くのは、1982年(昭和57年)にいったん運用を終了したものの、1992年(平成4年)にCCDカメラを取りつけて、あらためて運用を再開し、さらに10年ほど使われたということです

90年の歴史を経て生まれ変わるスパンの長さは驚きですが、超長期に渡る継続的な観測が重要な天体観測では当たり前なことかもしれないと思い直します。そう考えると、大赤道儀室の屈折望遠鏡も、いつかまた改造されて生まれ変わるのかもしれない、と少しワクワクします

ゴーチェ子午環室

展示室には、現在建設が進んでいる口径30メールの反射式望遠鏡の鏡が

展示室(西塔1階)では、現在利用されている人工衛星や天文台についての実験模型などを見ることができます。

TMT模型

入ってすぐのところにある「TMT(Thirty Meter Telescope)」は、日本とアメリカ・カナダ・中国・インドの5ヶ国共同でハワイ・マウナケア山頂で建設が進んでいる口径30メールの反射式望遠鏡です。30メートルという大きさの一枚の鏡(反射鏡)を作るのは困難なので、1.44メートルの六角形に区切って個別に鏡面研磨したものを492枚並べることで、1つの鏡にするとのことです。

アクチュエーターで反射鏡の変形を防ぐ

この反射鏡でおもしろいのは、素材としてガラスを用いているものの、ガラスそのもので光を反射するわけではなく、道路のカーブミラーと同じように、表面にアルミを蒸着させて鏡にする仕組みになっていることです。このガラス自体は黄色味がかっており、温度(気温)変化による変形が非常に少ない超低膨張ガラスという特殊なものを用いています。さらに自重などで微妙に変形してしまうのを、下から支えるアクチュエーター(電子制御の棒状のもの)で制御して、適切な面を保つ念の入れようです。

天文機器資料館にはさまざまな機械が並ぶ

見学コース終盤には天文機器資料館があり、そこでは星の角度を手作業で測定する六分儀にはじまり、(天体観測の時間軸としては)ごく最近まで使われていた機材までが所狭しと並んでいます。

昔に使われた機器から最近まで使われていたものまで所狭しと並んでいる

光だけでなく電波でも観測

現代天文学は、光(可視光)だけでなく、星が放つ電波も観測の対象です(電波天文学)。機材は高精度化し規模も大きくなり、天体観測と聞いてイメージする望遠鏡を使ったものとは、だいぶ違って感じるものもあります。

電波で星との距離を測る電波望遠鏡

ホンモノを感じて

三鷹キャンパスには、デジタル化された天体観測データやスーパーコンピュータなどによりシミュレーションされた最先端の研究成果を、3D(立体視)メガネで解説者から詳しい話を聞きながら鑑賞できる4D2Uドームシアターもあります(事前予約制)。

研究の最先端で使われてきた観測・実験機器、最先端の研究成果、そして将来目指す方向までもを、研究者自身の協力で、研究が行われている正にその場所で学べるのが研究所公開施設の醍醐味です。国立天文台三鷹キャンパスで、常に最先端で使われてきたホンモノの天体観測機器と天文学のスケールを感じてください

  • 名称: 国立天文台 三鷹キャンパス
  • 住所: 東京都三鷹市大騒2-21-1
  • 開館時間: 午前10時〜午後5時
  • 見学目安時間: 約2時間+4D2Uシアター1時間(要予約)
  • 入場料: 無料
  • オーディオガイド: あり(無料)、スマートフォンとイヤフォンを用意
  • 駐車場: あり(有料)

国立天文台(NAOJ)