カープチケット争奪戦緩和にファン期待 転売禁止法成立

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入場券を求め、マツダスタジアム前を埋め尽くしたファンのテント(2月27日)

 プロ野球広島東洋カープのチケットが手に入らない、と嘆いていたファンにも朗報となりそうだ。スポーツやコンサートのチケットを買い占める「転売ヤー」が野放しになっていた実態を受け、入場券不正転売禁止法が8日未明、成立。歓迎の声が相次ぐ一方、球団に対して、入場券の買い占めを防ぐ対策を強化するよう求める声も出た。

 「来年は、久しぶりにカープの試合を生で見られるかも」。広島市安佐北区で福祉施設を経営する国松浩司さん(55)は期待する。利用者のお年寄りも楽しみにしていたがチケットがすぐに売り切れ、今季は観戦がかなわなかった。「カープは市民の宝物。誰もがチケットを手に入れやすくなればいい」と力を込める。

 法律は、カープのチケットが一般発売される来春には間に合わないものの、公布から6カ月後の6月中旬には施行される。

 2016年以来、観戦に行けていないという中区の理容師静川勝成さん(49)は「インターネットオークションでは高過ぎて買えず、憤りを感じていた。法規制は遅過ぎた感もあるが、一歩前進だ」と喜ぶ。

 カープのチケットは近年、争奪戦の様相を呈し、今春の一般発売ではファンや転売ヤーとみられる業者が約1カ月前から列を作った。球団によると、一度に約200万円分を購入した人もいた。

 チケットは発売直後からインターネットオークションに出回り、定価の10倍以上での出品もあった。同じ出品者がチケットを複数回販売。「ダフ屋行為」を規制する自治体の条例などを意識してか「急用で行けなくなった」「他の良い席が取れた」などと、転売目的を否定する書き込みが目立った。

 新しい法律では、購入者が特定できる場合のこうした出品は「業としての不正転売」に当たり、違法となる。衆院法制局などによると、金券ショップなどが対面で定価を超える値段で売ることも違法となる。

 法律は、イベントの興行主に対しても、本人確認などの手段を通じて不正転売を防ぐよう、努力義務を課す。安佐南区の自営業中山貴司さん(41)は「法の網をかいくぐった転売を防ぐためにも、カープ球団は1人当たりの販売枚数を制限するなど、より多くの人にチケットが行き渡る仕組みづくりを工夫してほしい」と望む。

 ▽大量購入、記名も検討 球場

 近年、公式戦チケットの争奪戦が過熱している広島東洋カープは、不正な転売を規制する法整備を歓迎する。松田元オーナーは「数千円の券が何万円にもなるのはたまらなかった。本当に球場へ来たいファンに適正な価格で買ってもらいたい」と、悪質な買い占めの撲滅を期待する。

 日本野球機構(NPB)と12球団は、営利目的のチケット転売を禁じてきた。11月には、クライマックスシリーズ(CS)の入場券を高額で転売したのが西武のファンクラブ会員だったために判明し、約60人が退会処分となった。新たな法の適用も「購入者の特定」がポイントとなる。

 広島は球団ホームページやコンビニ販売では名前や連絡先の記入を求めるが、マツダスタジアム(広島市南区)の窓口ではその必要がない。入場券部の島井誠部長は「一定枚数を超える購入に対し、(記名などの)手続きをお願いするべきかも」と検討に乗り出す。成立した入場券不正転売禁止法は、興行主に入場時の本人確認などを努力義務として求めており、今後の対応策が迫られる。

 「営利目的」の背景には、全試合大入りが続く人気の高騰がある。この春はスタジアム窓口での購入を一時、1人5試合までに制限した。バスツアーなど集団観戦用の大量購入もあり、転売狙いとの線引きは難しい。悪質とみられる購入者には警告を与えてきたが、販売停止に至ったのは数例しかない。

 年間指定席は来季も約8300席がほぼ継続され、5年連続の完売となった。カープへの期待感は陰りを見せず、主催70試合分の入場券は来春、一斉に一般発売が予定されている。