社説(12/9):中国企業幹部を拘束/米中IT覇権で絶えぬ懸念

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 米国の対中国圧力の矛先が、ついにハイテク産業の最大手に向けられた。

 中国通信機器の華為技術(ファーウェイ)の最高財務責任者(CFO)孟晩舟容疑者が、米国の要請を受けたカナダ司法当局に拘束された。同社は、米がイランに科した経済制裁に違反し金融取引に関与した疑いがあるとされる。

 先日の米中首脳会談で、貿易戦争は「一時休戦」に入ったかに見えたが、一向に攻勢を緩めない米国側の不信の根深さをうかがわせる。

 同社の排除を狙う米政権に同調する形で、日本政府もファーウェイ製品などを政府調達の対象から外す方針だ。同盟国を巻き込み、対立は先鋭化してきたと言える。

 ファーウェイは、国家主導による産業政策「中国製造2025」の中核。次世代通信規格「5G」の開発でも世界をリードする存在だ。

 中国IT企業が通信機器を利用し軍事情報が盗用されることを恐れる米国では8月、国防権限法が成立。同社と、同業の中興通訊(ZTE)について「安全保障上の脅威になる」と政府機関による2社製品の使用を禁じ、利用する企業との取引も制限した。

 ZTEは4月、北朝鮮などに対する輸出規制に違反したとして米国から部品供給を断たれる制裁を既に受け、一時存続の危機に陥った。

 今回、最大手ファーウェイの狙い撃ちは、米中のハイテク覇権争いの核心部分を突いた。安全保障面で決して譲らない米国の厳しい姿勢を示したとも言えよう。

 ファーウェイ側は「事業を行う国と地域の全ての法規制を順守している」と反発する。捜査で違反が認定されれば制裁が科され、経営に重大な影響が及ぶ可能性がある。

 米国から日本など同盟国に2社製品を使わないよう要請があったとされ、包囲網構築が徐々に進んでいる。

 日本も安全保障上のリスクに備えるのは当然としても、特定企業のサイバー攻撃や情報盗用防止に政府挙げて取り組む時なのかどうか。米国の対中圧力の片棒を担がされているのだとしたら問題だ。

 日本の対中外交は、知的財産権保護の是正なども含め、対話できる関係に改善しつつある。米国追従ではなく主体的な判断をすべきだろう。

 ファーウェイとZTEは携帯通信インフラ市場で、2社合わせ世界シェアの4割を占める。得意とする5Gは自動運転車などを支える不可欠な技術。米市場から締め出されれば、取引がある米国企業にも大きな打撃となるはずだ。

 貿易摩擦の裏側にあったIT覇権争いが表に現れ、米中対立の本質が見えた。知的財産権侵害の問題は今回の事件で、いや応なしに今後の通商協議の中心テーマになろう。

 両国は再び対立を激化させるべきでない。疑心を超え、冷静な対話と交渉によって双方の懸念を取り払いたい。