社説[改正入管法成立]実習生の環境改善急げ

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 法案の中身はがらんどうのように内容が乏しく、国会審議はあまりに拙速。政府でさえ十分な説明ができないような問題だらけの法案を、数の力で押し通してしまった。

 外国人労働者の受け入れを拡大するための入管難民法改正案が8日未明、参院本会議で可決、成立した。

 高度な専門職に限定していた従来の施策を転換し、来年4月から、人材確保が困難な「単純労働」分野に初めて、外国人労働者を受け入れる。

 技能水準に応じて「特定技能1号」「特定技能2号」という新たな在留資格を設け、就労を促す。対象は介護職や建設業など14業種。

 歴史的な政策転換には違いないが、それにしては理念がはっきりせず、受け入れ後の将来像も示されていない。

 与党が今国会での成立にこだわったのは、来年夏の参院選をにらんで、人手不足に悩む経済界や地方に実績をアピールしたかったからだろう。

 強行採決に対して自民党の平沢勝栄・衆院法務委員会理事は「この問題は議論したらきりがないんです」と弁解していたが、語るに落ちる話である。

 国会で明らかになったのは、現場で酷使される技能実習生の衝撃的な実態である。

 法務省資料によると、2015年から17年の間に69人が死亡し、今年上半期、4279人が失踪した。

 週130時間勤務で月給9万円など、実習生の67%に当たる1938人が最低賃金を下回っていたことも判明した。その実態を検証し早急に対策を講じることが先決だ。

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 政府は「特定技能1号」について、初年度に受け入れる労働者の50%台が実習生からの移行、だと見込んでいる。

 であればなおさらのこと、実習生を使いがってのいい単なる「労働力」とみなし、時に威圧的な態度で接する企業側の意識を変えていかなければならない。

 外国人労働者が増えていくことは、働く職場だけでなく、その地域にもさまざまな影響を及ぼす。

 日本語に悩む外国人のため、誰が日本語教育の面倒をみるのか。建設現場では、コミュニケーション不足が大きな労災事故につながるおそれもある。

 政府は5年目までの累計で最大34万5150人の受け入れを見込む。この人たちの生活環境や職場環境の整備は緊急の課題であるが、そのことは本格的な「共生社会」をどのように築いていくか、という問題にほかならない。

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 衆参両院の法務委員会の実質的な質疑時間は、計35時間45分だった。与野党が対決した最近の重要法案と比べても、異例の短さだ。

 「来年の参院選前にごたごたするのは選挙にマイナス」だという空気の反映だとしたら、国民の側に目が向いていないことになる。

 大島理森衆院議長は、来年4月の法施行前に政省令を含めて国会報告させる-と異例の裁定をした。法案を巡る与野党の対応に議会政治の危機を感じたからではないか。

 議論を終わらせるようなことがあってはならない。