表現多彩 「肩車」の謎 中城・北中城で14種類以上 子の遊びから増える

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 両肩に人を乗せて担ぐ肩車。親にしてもらったり、子どもを乗せたり、懐かしい思い出のある人も多いだろう。その肩車を意味するしまくとぅば。地域によってたくさんの表現がある。なぜなのか。種類が豊富といううわさの中城、北中城の両村で探った。(特別報道チーム・下地由実子)

隣同士でも違い 

 「あれっ、『まったかさー』じゃないの」。中城村南上原の比嘉ナヘ子さん(74)が驚きの表情を浮かべた。

 11月下旬。お年寄りが集まる村老人福祉センターで、しまくとぅばで肩車を何というか、尋ねた。70~80代の女性10人が「何だったかね」と首をかしげる中、飛び出した「まったかさー」。「初めて聞いた」と感嘆の声が上がった。比嘉さんは「昔から言うのに、みんな知らないから、『なんで』って不安になったわ」と苦笑いした。

 中城と北中城は1946年に分かれるまで、もとは一つの「チョウデームラ(きょうだい村)」。だが、肩車の表現はさまざまで、隣集落で違うことも多い。

 例えば、「まったかさー」の南上原の隣り、北上原では「かたんまー」。津覇は「まーしーだか」、伊集は「まーちだかー」だ。伊集の新垣徳康さん(86)は「何でそう呼ぶか分からない。子どもの頃から使うのに。他部落でなんと言うかは知らないな」と話す。

 今回、教えてくれたのは、70代後半から90代のお年寄り30人近く。老人クラブや商店で尋ねたり、過去の取材でお世話になった方々に協力を仰いだ。

「ちょんだらー」

 両村32集落のうち、分かっただけでも14種類。「肩馬」が変化したとみられる「かたんまー」(安里、屋宜原など6)や「かたんま」(新垣、安谷屋など5)が主流を占める。

 少数派は、屋宜、添石の「かたぼうしー」、股を担ぐ意味という「またがたみー」(島袋)。中でも聞いた人がそろって目を丸くしたのが、北中城村熱田の「ちゅんずるばーたー」。友だちと思い出した熱田出身の安里春子さん(75)=渡口=は「忘れていたけど聞いたら覚えがあった。でも由来はわからない」と笑う。

 「まさかそれが」という表現も。北中城村喜舎場や仲順などの「ちょんだらー」だ。ちょんだらーと言えば、エイサー。関係があるのか。喜舎場の安里一三さん(86)は「意味は分からない。学校以外は方言を話すから、ずっと『ちょんだらー』だったよ」と笑う。

 一三さんは10歳頃まで、友だちと肩車で騎馬戦のように対戦し、上に乗った子のかぶる帽子を取り合う遊びをしたという。妻の初恵さん(81)は「昔は自分の部落でしか遊ばない。だから、他部落の言葉は全然聞いたことがなかったと思う」

仲間同士の「絆」

 肩車に表現の種類が多く、共通性がみられないものもあるのは、なぜか。

 しまくとぅばに詳しい琉球大学の狩俣繁久教授の解説は明快だ。「子どもの遊びだから」。子どもは一定の範囲で小人数で遊ぶため、仲間だけで通じる言葉が自然発生し種類が増える。さらに、言葉の置き換えが起こりやすく、そう呼ぶようになった動機もわからないことが多いという。「子どもの時だけなど使う時期の短い言葉は最も廃れやすい。大人の労働や生活に必要な単語が広く流通し、世代を超えて伝わるのとは大きな違いだ」

 狩俣教授は、言葉には地域の絆を強める紋章的な機能があると指摘する。「自分たちだけのもの、他とは違うものにアイデンティティーが出る。子どもなら、それが遊びの単語なのだろう」

 どこでも、誰でもしたであろう肩車。あなたのふるさとでは何と言いますか。

 

中城村・北中城村での「かたぐるま」の言い方