【社説】改正入管法成立 運用、厳しくチェックを

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 単純労働の外国人労働者を受け入れる改正入管難民法がきのう未明、成立した。来年春に施行する。従来は研究職などに限ってきた、永住や家族帯同の可能な業種を事実上広げる。

 日本社会のありように関わる政策転換である。にもかかわらず、制度設計を詰めないまま、数の力で押し切った。一連の国会審議を総括すれば、そう言わざるを得ない。

 人口減が進む中、労働力不足は深刻な課題だ。外国人に補ってもらうのなら、地域社会の一員として受け入れる責任と覚悟が国全体で求められる。

 それを具体化するのが制度設計のはずだった。今後示されるという政省令や対策を厳しくチェックする必要がある。国会で改めて議論すべきである。

 新たな在留資格となる「特定技能」を巡り、政府は建設業や介護業などの14業種を対象に挙げた。今後5年間で最大34万5千人という見込みも示した。だが、実際の業種や人数は法改正後に省令で定めるとしたため、国会審議は数的根拠も曖昧なままに終始した。

 受け入れ拡大を要請してきた経済界でさえ、法改正を評価する声ばかりではない。経済同友会の小林喜光代表幹事は、歓迎しつつも「十分な議論が行われたとは言い難い」と指摘し、遺憾の意を示した。立法府の国会の存在意義が問われよう。

 大島理森衆院議長が下した異例の裁定も、論戦空洞化の証しといえる。政府に対し、法施行前に政省令を含む制度の全体像を国会に報告するよう注文を付けた。行政府への監視機能は今後、改正法の運用面でも果たされる必要がある。

 制度設計で、特に注目したいのは受け入れ環境の整備である。医療や福祉、生活支援、日本語教育など多岐にわたり、厚生労働省や文部科学省といった省庁間の連携も必要になる。政府がうたう「共生社会」づくりの本気度が表れよう。

 定住を前提とすれば、各地にワンストップの生活相談窓口も置かねばならず、地方自治体の協力が欠かせない。ところが、当の自治体からは、財政難や人手の少なさで態勢づくりが難しいという声が上がっている。国として、どう支援するかが試されることになる。

 国会審議を通じ、浮き彫りになったのは技能実習制度の問題点だった。論戦が参院に移った後も、現場の深刻な労働環境が次々と明らかになった。

 失踪後に見つかった実習生を対象にした法務省の聴取票を野党が分析すると、7割の約1900人が最低賃金を下回っていたことが判明。過去3年間で69人の実習生が死亡した事実も分かった。違法をうかがわせる、このような事態を放置してきたのは信じ難い。法務省は詳しく調査する姿勢を示している。

 政府が、新在留資格と技能実習制度を「別物」と言い張っても、新資格の「特定技能1号」の半数は実習生からの移行を見込んでいる。実習制度そのものの廃止を含めて検討しなければ、「共生社会」に向かっているとは言えまい。

 地域社会の一員として、外国人労働者を受け入れるには、さまざまな障害や摩擦が予想される。一筋縄にはいかないだろう。より良い制度にするには、国会での熟議が必要である。