ドライブレコーダーの開発・製造 九州テン 佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・8

 企業の一つの部門から生まれた小さな会社は、無線通信技術を中心として、規模を拡大した。時代のニーズを反映したとも言える。
 1967年、エコー電子工業の修理・製造部門を切り離してスタートした。社員は10人ほど。タクシー無線の修理が主な業務だったが翌年から製造を始めた。
 社是は、儒教の経典「中庸」の一節「誠は天の道なり」。社名の「テン」はここからきている。時代が移り変わっても誠を貫くことこそが、顧客から信頼され、社会の信用を得ることにつながる-。そうした「信念」と、「顧客第一優先」の経営理念を掲げる。
 創業当時からの技術を生かし、時代の変化に応じて事業を展開してきた。
 防災無線の関連業務も手掛け、ものづくり事業と保守サービス事業の2本柱となった。90年代後半から2000年代にかけ携帯電話の普及に伴い、機種の修理業務が増加。業務用端末も取り扱い、事業は急成長を遂げた。

製品の基盤を組み立てる従業員=佐世保市小佐々町、九州テン

 しかし、長くは続かなかった。携帯電話関連の事業が伸び悩んだ時期に手掛けたのが、現在の主力となるドライブレコーダーの製造だった。受託製品に加え、一部は開発から携わる。
 間嶋力彦代表取締役社長(64)は「ドライブレコーダーで録画するだけでなく、今後は高機能化する。集積したデータをドライバーにどう還元するかが問われる」と先を見据える。
 ただドライブレコーダーも「未来永劫あり続けるとは限らない」(間嶋社長)。これまで以上に時代の流れは速い。だからこそ、市場の変化を見極め、その時代に合った製品を送り出している。16年には、あらゆるモノがインターネットでつながる「IoT」技術を生かした自社製品「QRIoT」(キュリオット)を発売した。
 17年には佐世保市小佐々町に新工場を構えた。面積は約8400メートルで、従来の約2倍。効率化に加え、高度なクリーン化も実現。製造機器の増加や多品種化にも対応できるようになった。
 工場移転後、住民を招いたバーベキューや子どもたちを対象にした工作教室を毎年開き、地元との交流も深める。「成長する中でも、地域に好かれる企業にならなくてはならない」。間嶋社長は、こう力を込めた。

自社製品「QRIoT」(左)と、製造したドライブレコーダー

◎九州テン
 本社は福岡市博多区博多駅前2丁目、本店・佐世保工場は佐世保市小佐々町葛籠。1967年12月、エコー電子工業の修理・製造部門を切り離し、神戸工業(現デンソーテン)との共同出資で設立。間嶋力彦代表取締役社長は6代目。従業員数は573人(10月現在)。主な取引先は、富士通、デンソーテン、エコー電子工業など。

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