被爆体験者第2陣訴訟 きょう控訴審判決 低線量被ばくの影響焦点

 爆心地から12キロ以内の被爆未指定地域で長崎原爆に遭った「被爆体験者」161人が県と長崎市を相手に、被爆者健康手帳の交付を求めた第2陣訴訟で福岡高裁は10日、判決を言い渡す。2016年2月の長崎地裁判決は、被ばく線量の推計値を基に原告のうち10人を被爆者と認めたが、二審では低線量被ばくによる健康被害の有無が焦点となりそうだ。
 訴訟では、被爆者援護法が「身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と規定する「3号被爆者」に原告が該当するかが主な争点だ。
 第2陣一審判決は「自然放射線による年間積算線量の平均の10倍」を基準に健康被害が生じる線量を独自に提示。原告161人のうち、年間積算線量が25ミリシーベルト以上と推計される10人を「3号被爆者」と認めた。この判決に対し、原告と被告の双方が控訴した。
 県と長崎市は、原告側が訴える低線量被ばくの健康被害に対し「科学的意義を有するものではなく誤り」と指摘。さらに10人を被爆者と認めた一審判決を「科学的合理性を伴わない範囲まで拡大しかねない」と反論している。
 16年5月の第1陣控訴審判決は、被爆体験者が原爆に遭った爆心地から5キロ以上離れた場所では、原爆の放射線被害を認めず、「放射線による急性症状があったと推認することはできない」と判断。昨年12月の最高裁判決も二審判決を支持した。このため第2陣の一審判決が見直される可能性も指摘されている。
 ただ、第2陣控訴審で原告側は、第1陣で提出していない新たなデータを提出。米国など3カ国の原子力施設の従業員が、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでも長期間受け続けると健康被害を生じたとする統計データを、高裁がどう評価するかが注目される。
 第2陣原告団長の山内武さん(75)は「第1陣最高裁判決は厳しい判断が下されたが、私たちは全員勝訴を信じている」と話した。

◎被爆体験者
 国が定める被爆地域(南北12キロ、東西7キロ)外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない人たち。国は被爆当時の行政区域を基に被爆地域を設定したため、爆心地から同じ半径12キロ内で原爆に遭っても、場所によって援護に差が生じている。被爆体験者は被爆者援護法に基づく援護が受けられず、医療給付は精神疾患と合併症に限られる。国の支援事業で健康診断を年1回無料で受けられるが、がん検診は含まれない。

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