金属行人(12月10日付)

 住友金属鉱山と住友商事がチリのケブラダ・ブランカ銅鉱山への参画を決めた。年間約24万トンの銅精鉱を生産する大型開発プロジェクトだ。今年は三菱商事のケジャベコ銅鉱山(ペルー)の権益追加、JX金属などが出資するロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)のプラント増強など、日本企業による銅鉱山投資が目立つ▼米中貿易摩擦の長期化などで足元の銅価格は6千ドル台前半と上値の重い展開が続く。開発コストの上昇などから「新規鉱山開発には7千ドルは欲しい」との声もある中で投資が進められる背景にあるのは、今後の「銅不足」だろう▼「本当に銅は不足するのか」。業界の方に聞くと「確かにEVの本格普及はまだ先かもしれないが、モーターに使う巻線など電動車向けの需要はすでに立ち上がっており、欧州の自動車電動化に向けた動きも速い。一方で需要の伸びをカバーする新規鉱山案件が少な過ぎる」と教えてくれた▼もう一つ大きいのは日本企業が出資する鉱山の「質」だ。大規模で資源量が豊富、鉱石品位が良い、政治リスクの低い開発国などの条件を満たす優良鉱山は世界的に数少ない。目利き力を生かした各社の打ち手は長期的な日本の銅資源確保に間違いなく寄与する。

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