【三井物産スチール設立10周年】〈三井物産鉄鋼製品事業の戦略〉《鉄鋼製品本部長・堀晋一執行役員に聞く》事業投資と物流、両輪で 三井物産スチール・ゲスタンプなど4事業が核、総合力を活用

三井物産鉄鋼製品本部長・堀晋一執行役員

――上期業績は売上総利益138億円、持ち分法利益115億円、純利益79億円でした。通期純利益は150億円の見通しですが、グループの収益動向について。

 「三井物産・鉄鋼製品本部の核となる事業は(1)エムエム建材やセイケイなどのグループ会社を含む三井物産スチール(MBS)の物流事業(2)ゲスタンプを中心とした自動車部品事業(3)ニューコアとの合弁事業であるスチールテックを中心とする米国事業(4)持ち分法適用会社となった日鉄住金物産―の四つが大きな塊となる。この四つの事業が、それぞれ純利益ベースで35億~40億円を確保するのが当社鉄鋼製品事業の現状。今年度の通期純利益150億円レベルは巡航速度と言える」

――各事業の現状と課題を伺いたい。まずは三井物産スチール(MBS)から。

 「三井物産本体(MBK)とMBSは、明確な役割分担がある。本体は事業投資を、MBSは国内・輸出を含めた物流を担う。資本関係を見るとMBSは三井物産の子会社だが、あくまで並列の位置関係。物流(MBS)と事業(三井物産)が両輪となる」

 「これまでも両輪と言ってきたが、以前はMBSとMBKの連携が足りなかった面がある。MBSは日々お客さんと接し、日々の物流を担っており、豊富な顧客アセットを持っている。一方で三井物産本体は、ゲスタンプやニューコアなどパートナー企業との事業を通じた強固な関係が強み。事業投資の中で新たな物流ニーズが出てくればMBSの出番となり、逆にMBSの商売の中から事業のネタを発掘できる。連携は双方向であることが重要だ」

――連携を強化する組織もつくりました。

 「三井物産とMBSの双方に、総合力戦略室/部というミラー組織をつくり、そこが両組織の結節点としている。それぞれの現場から上がってくる情報やアイデアを集め、よろず相談窓口の機能も持つ。その組織を通じてアイデアを実現化し、両社の連携を強めていきたい」

――日鉄住金物産への事業譲渡でMBSの拠点がなくなった国内4地域(北海道・東北・中国・九州)には、スチールコーディネーター(計4人)を配置しています。

 「商売は日鉄住金物産に移管したとしても、地場目線での鉄鋼以外も含めたお客様との幅広い関係強化は非常に大切だと考えている。スチールコーディネーターは鉄鋼製品本部と支社の業務室との兼務となっており、鉄に限らず総合商社としての三井が本体の総合力を活用しながら新たな仕事をつくり出すお手伝いをしていく」

――では次に、二つ目の事業であるゲスタンプについて。

 「現在6人が当社から出向しているが、国内初の松阪工場(三重県)も稼働した。株主としての当社の第一義的な役割は(1)日系自動車メーカーを中心とした営業(2)ゲスタンプが持つ世界各地の工場の操業効率化への協力―など。操業効率化には当社のICT事業本部等が持つAIのノウハウなども提案・展開する。ゲスタンプは当社にとって貴重な自動車部品事業のプラットフォームであり、従来は見えなかった自動車分野の世界が見えるようになった。5~6年先の車の構造変化を見据え、EV化・マルチマテリアル化への対応を強化したい」

――三つ目の米国事業は。

 「スチールテックはニューコアとの折半出資による合弁となるが、同社との関係強化が進んでおり、さらに進化させていきたい。足元の業績も好調だ。自動車向けが5割超あるが、最近はアルミ材の加工も増えてきている」

――四つ目の日鉄住金物産について。

 「当社からは190人が移っている。そのうち出向者が30人。新日鉄住金からのソーシング(調達力)に優れる日鉄住金物産と、海外でのお客さんへの販売力がある当社がお互いの強みを生かしながら案件を追いかけていくといった形で、さらに相乗効果を高めていきたい」

 「両社はすでに物流面で、貨物の相積みによる海上運賃低減などの協業を行っている。近隣CC(コイルセンター)で加工能力を融通し合うことなどもさらに進めたい。できるところは積極的に協業や連携を進めていく」

 「三井物産本体からの視点で見ると、(1)三井物産スチール(2)日鉄住金物産(3)(メタルワンとの合弁である)エムエム建材―はそれぞれ違った役割や機能を持っている。それぞれが強みを発揮し、相乗効果を追求したい」

――中国・宝武鋼鉄集団とはコイルセンター「上海宝井」を中国全土で展開しています。

 「現在、中国で13拠点のCC網となっており、安定的な収益貢献がある。次のステップに向けてハイレベルな協議を進めているが、既存拠点で自動車向け主体にマルチマテリアル対応を進めることなどが課題となる」(一柳 朋紀)

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