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15歳の決断
フィギュアスケート女子の新女王の誕生に紀平梨花選手(16)=関大KFSC=が8日、バンクーバーで行われたグランプリファイナルで自己ベストの合計233・12点をマークして平昌冬季五輪女王のアリーナ・ザギトワ選手(ロシア)を破り、初出場優勝の快挙を成し遂げた。日本勢でGPデビューシーズンでの制覇は2005年の浅田真央さん以来。
「真央ちゃん」にあこがれる紀平選手は昨年、15歳の時に大きな決断をした。フィギュアスケートを続けるために、どういう環境がいいか真剣に考えてネット通信制の「N高校」(本校・沖縄県うるま市)に進学した。
N高は2016年4月、「ニコニコ動画」運営のドワンゴを統合した「カドカワ」が開校。ネット社会に対応するためスマホなどを活用、時間を効率的に使って高校卒業資格に必要な授業を受けたり、リポートを提出するのが特徴だ。
「卒業式も修学旅行も行くことができなかった…」「それでも本人や保護者が強い目標意識を持っていた」。競技中心の日々の生活の中で紀平選手は普通の中学生のように学校の行事に参加できないこともあったが、将来の道のりを見極めて自分で進路を決めたと、母校の中学校の教員は話す。
ネットの授業
N高の広報担当者によると、練習の合間、車の移動時間、寝る前に授業を受けるためにスマホと向き合い、紀平選手は履修した科目を受け続けている。
年に5日間程度は直接、授業に出て合宿のようなカリキュラムもこなす。本校は沖縄県うるま市にあるが、東京や大阪などの会場で実地授業が行われており、紀平選手の担当教員は大阪にいて、本人とやりとりをしているという。同校の授業は、プログラミングやライトノベル創作、ゲームなどの課外授業や、各地での職業体験もできるようなシステムになっている。
N高の在校生は今年11月末の時点で、7474人。今夏のジャカルタ・アジア大会では公開競技だったeスポーツのサッカーゲーム「ウイニングイレブン」で優勝した日本チームの相原翼選手や囲碁の女流棋聖、上野愛咲美さんも在校生だ。
スポーツ、競技種目をメインにした生活を送りながら、高校生としてネットを通じて学んでいる10代が、すでに世界の一線に立っていることに新鮮な驚きを感じる。
(共同通信=柴田友明)
【紀平 梨花】5歳でスケートを始め、16年に国際スケート連盟(ISU)公認大会で初めてトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功した。17年にジュニアGPファイナルで女子では世界初の3回転半―3回転トーループを決め、全日本選手権で3位。シニアデビューの今季はGPシリーズで2連勝。関大KFSC、ネット通信制N高1年。154センチ。16歳。兵庫県西宮市出身。
【番外編】
紀平さんがあこがれた浅田真央さんの近況は筆者のインタビュー記事をご覧ください。