『宵闇真珠』 尋常でない映像の美しさ

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 国際的に知られる撮影監督クリストファー・ドイル。特に香港のウォン・カーウァイ監督とのコラボが有名だが、映画監督としても浅野忠信主演の『孔雀』などを発表している。その彼が、私生活でもパートナーであるジェニー・シュンと共同監督&脚本を務めた作品だ。舞台は、香港の片隅にある、時代に取り残されたような漁村。密かに再開発計画が進む中、父親から陽に当たると死ぬ病だと言われて育った16歳の少女が、村を見下ろす廃屋に住み着いた異邦人の男と出会い…。

 名カメラマンの映画だけに、映像の美しさが際立つ。中でも水の描写、とりわけ水面の幻想的な美しさは尋常でない。もちろん水以外でも、煙や炎、カーテンや紙のはためきが生む風=空気の視覚化、望遠鏡のようなカメラ・オブスクラのレンズや鏡、窓ガラス越しの映像…。フォトジェニックな主演の二人も含め、ほかの何よりも画面の強度が優先されているように思う。

 だからこれは、映し出されている“場所”の映画であり、その集合体である“町”の映画といえる。この町で明らかに浮いた存在なのに、この町で生まれ育ち、この町を出ることのない少女は、さながらこの地に根付く妖精といったところ。つまり本作は、他所から来た旅人の目を通して描かれる、あらゆる意味で美しいおとぎ話。心よりも“目”の保養になる映画である。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本・撮影:クリストファー・ドイル

監督・脚本:ジェニー・シュン

出演:オダギリジョー、アンジェラ・ユン

12月15日(土)から全国順次公開

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