最古参の前田 ファン惜別 J1昇格決めたゴール「一生忘れない」

「大好きな長崎、これからも」

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 約4千人が詰め掛けたV長崎のファン感謝デー。今年の主役は、間違いなく前田悠佑だった。在籍7年の最古参は、今季限りで契約を満了。「寂しいし、悔しい。長崎のためにもっと力を出したかった」。あいさつに立つと、込み上げる涙をこらえることができなかった。
 シーズン終了から2日後の今月3日。退団の一報は、ファンに大きな衝撃を与えた。「初っぱなが前ちゃんとは…」「悲しくて立ち直れない」。J1昇格で中盤の選手が補強され、今季は出場機会が減少。リーグ戦出場13試合のうち先発はわずか2試合にとどまっていた。
 出場機会に恵まれなくても、ピッチ外では苦戦するチームの先頭に立ち、士気を保つ役割に徹した。高木監督にとっては「一番の理解者」。図らずも、その指揮官と時を同じくしてチームを離れることになった。
 福岡県出身。大学卒業後は働きながらアマチュアでプレーした。夢を捨てきれずに2011年、退職してJクラブなどの入団テストに挑戦。V長崎の目に留まり、念願のプロデビューを果たした。日本フットボールリーグ(JFL)、J2、そしてJ1を知るチーム唯一の存在だ。
 中盤の底で泥くさくボールを拾い、味方につなぐプレースタイル。J1昇格を決めた昨年11月の讃岐戦では決勝ゴールを挙げて「一生忘れない試合になった」。ゴール後、テレビの実況アナウンサーは「本人よりも他のメンバーが、そしてサポーターが喜んでいる」とその人気の高さを表現していた。記録以上に、記憶に残るプレーヤーだった。
 今後は自らの可能性に懸けてJリーグトライアウトに参加するが、一方で家族を養うために引退も視野に入れている。「大好きな長崎を、これからもどうかサポートしてください」と最後まで呼び掛けた34歳。長崎を愛し、長崎から愛された男が、惜しまれながらチームを去った。

ファンらと笑顔でタッチする前田=長崎市営ラグビー・サッカー場