「クラスA」重大事故 米軍機墜落のなぜ 捜索打ち切り…

米海兵隊のFA18戦闘攻撃機(ゲッティ=共同) 下は空中給油を終えて並んで飛行するFA18戦闘攻撃機

 米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)のKC130空中給油機とFA18戦闘攻撃機が高知県沖の太平洋上で接触、墜落した12月6日未明の事故。米第3海兵遠征軍は9日、事故の深刻状況を示す4つの分類のうち最も重大な「クラスA」に当たると発表した。事故で、FA18の乗員2人は救助されたが、うち1人は死亡。行方不明となった空中給油機の乗員5人について手掛かりがなく、防衛省は11日、米軍と調整した上で不明者の捜索を打ち切った。難度が高い夜間の空中給油訓練を行っていたとみられている。事故原因は何だったのだろうか。

(まとめ 共同通信=柴田友明)

米海兵隊岩国基地所属機が墜落した高知県沖で、捜索活動をする海上保安庁の船と米軍機=2018年12月6日午後1時30分(共同通信社機から)

 給油スタイルの違い

 事故は6日午前1時40分ごろ、高知県・室戸岬の南約100キロで発生した。航空機事故の状況によって米軍は4段階評価しているが、被害額200万ドル(約2億2千万円)以上の被害、航空機の損傷、死者が出る事故ケースなどに「クラスA」を適用している。2017年8月にオーストラリア沖で米軍普天間飛行場所属のオスプレイが揚陸艦に着艦時に接触、3人が死亡した事故も「クラスA」に分類されている。(米軍の調査報告書ではオスプレイの機体から吹き下ろす風が揚陸艦に当たり、気流の乱れが起きて、片翼のバランスが崩れて飛行に必要な揚力を失ったと原因を指摘している)

 高知県沖の事故では、KC130空中給油機から伸ばした給油ホース(ドローグ)がFA18に当たって、どちらかがバランスを失い接触した可能性も指摘される。このタイプでは給油ホースの先端が開きかけたパラソルのような形状になっており、通常はFA18側の方が近づいていき、自機の給油ノズルに挿入するように操縦するやり方だ。今回、FA18のパイロットがどのように給油機にアプローチしていたかは原因を知る上で、一つのポイントだ。

 接近する際には編隊飛行と同様に、「水平」「前後」「垂直」の3点のレベルを合わせて双方がくっつく。航空自衛隊F15戦闘機も空自KC767空中給油機に接近していく基本は同じだが、接続の方式が違う。KC767のオペレーターが最終的に給油ホースの位置を調整して、給油機側がF15の給油口に合わせて操作するようになっていると、空自パイロット経験者は語る。

米軍普天間飛行場から飛び立つオスプレイ=2017年1月、沖縄県宜野湾市

 何らかの不具合?

 事故は午前1時40分の未明。夜間帯は本来、暗視装置も完備して、接続部分もライトで照らし出されるようになっている。当時は悪天候だったとされ、限られた条件下で続けられた訓練中に何らかの不具合、乱気流などが生じた可能性、あるいは操縦面での人的ミスも否定はできない。「昼間より夜間は距離感がつかみにくく、視野も狭くなる」(自衛隊パイロット経験者)。

 事故機のFA18は、2人乗りの複座式で緊急脱出の操作で、それぞれ座席ごと空中に放たれていた。「ベイルアウト」(射出座席)はジェット戦闘機が登場する映画(例えばトップガン)で知っている人が多いかもしれない。パイロットはやがて座席からも切り離されてパラシュートで安全に降下、着水と同時に救命用のボートが開くので、そのまま救援を待つことになる。

 しかし、今回は1人は助かったが、もう1人は座席ごと海中に落ちて亡くなっていたとの情報もある。なぜ完全なかたちで緊急脱出の装置が働かなかったのか、接触時の機体のバランス、高度などさまざまな要因が考えられる。これも事故原因を知る上でのポイントになる。

米軍岩国基地に着陸するKC130空中給油機=2014年7月、山口県岩国市

 過密な飛行状況

 事故の直接的要因ではないが、米海兵隊岩国基地は在日米軍再編に伴う部隊の移転で過密な飛行状況になっているとされる。今年3月までに米海軍厚木基地(神奈川県)から原子力空母の艦載機や米海兵隊のF35、普天間飛行場のKC130も移駐している。岩国の米軍機全体で倍増の120機となっている。極東最大は沖縄県の米軍嘉手納基地だが、岩国基地も「極東最大級」と言われるほど、米軍にとってより大きな拠点基地になりつつある。

 岩国基地の滑走路の運用時間は原則、午前6時半から午後11時までだが、時間外のケースでは米軍が岩国市に連絡するよう決められている。岩国市には、12月1日から約1週間、時間外に運用する可能性があると伝えられた。米軍の動向をウオッチしている市民団体によると、11月ごろから運用時間外の飛行が常態化していたという。「選択と集中」とも言える部隊の大再編の中で、米軍が難度の訓練を続けていこうとする気運の中で、今回の事故は起きたと言える。

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