<隠れた名盤> Various Artists『童謡の声』 シンプルな童謡だからこそ分かる、歌い手の本質

Various Artists『童謡の声』

 「童謡」という言葉の誕生から100年を記念して企画された絵本付きのCD。様々なタレント性を持つ男性の歌声や、西尾周祐、新垣隆、大井健による上質なピアノ、そして絵本の広告風イラストなど、むしろ大人向けに作られた気がする。

 全14曲、どれも飾り気のないピアノ演奏で、うち12曲が歌入り。ひたすら真っ直ぐ歌う濱田岳の『浜辺の歌』、犬の困った感じが上手い神谷浩史の『いぬのおまわりさん』、大空に手を広げている画が浮かびそうな山崎育三郎の『七つの子』、そして温かな歌声だけで南国気分が味わえる比嘉栄昇の『椰子の実』など、俳優、声優、ミュージシャンとそれぞれの生き方が歌声に表れていて面白い。しゃがれた低音での遠藤憲一の『しゃぼん玉』もスターの栄光と闇が透けて見えそうだ。

 個人的には、『赤とんぼ』を歌う尾崎裕哉は父親(尾崎豊)ゆずりの美声だし、『ちいさい秋みつけた』を歌う石崎ひゅーいは不安げな声が秋によく合うと感じた。いずれも、シンプルな童謡だからこそ本質が分かった気がする。

 第2弾として、女性編もあれば面白そう。本作を先入観なく聴けば、自分自身を見つめ直すキッカケにもなるはず。

(ユニバーサル CD+BOOK 3241円+税)=臼井孝

© 一般社団法人共同通信社